借金してまで学びたいのか、真剣に考えよ

私立大は何校も受験でき、合格発表後に入学校を決める。複数合格した場合、受験生や保護者は志望が高い順に選んでいくが、合格した大学の中で志望順位が下位であっても、給付型奨学金がもらえる合格だからと入学してくれれば、優秀な学生を確保したい大学の狙い通りになる。しかし、奨学金をもらえる合格を勝ち取ったとしても、大半の受験生は入学していない。それより、奨学金はもらえないが、第一志望である難易度の高い他大学に入学手続きを取ってしまうのだ。入学者は奨学金の募集人員を大きく下回り、奨学金受給者は実質的には少ないのが普通だ。大手私立大の入試担当者はこう話す。

「入学してくるのは、奨学金合格者として発表したうちの1割ぐらいですが、授業料全額免除ですので入学者は国立大を蹴ったり、レベルの高い私立大を蹴って入学してきていますから、こちらの狙い通り優秀な学生が入学しています」

最近、増えているのが予約型の給付奨学金制度だ。入学を希望する大学の書類審査を受けて受給資格者になり、合格して入学すると奨学金がもらえる。もちろん、保護者の年収制限はあるが、入試の成績は関係ない。受給資格を得られれば、安心して受験勉強に打ち込めることになる。

一方、貸与型奨学金制度の中心は国の制度だ。国の奨学金制度を運営しているのは日本学生支援機構(JASSO)だ。その調査によると、2015年にJASSOの奨学金を受けとっている学生は2.6人に1人になるという。大学独自の制度も加えると、おそらく今は大学生の2人に1人が奨学金を利用していることになる。JASSOの奨学金は無利子の第一種と卒業後、有利子になる第二種がある。第二種は最大月12万円まで借りられる。もちろん、他の奨学金制度と併用も可能だ。こうして、奨学金の額がどんどん膨らんでいく。

今は昔と違い大企業でも破たんする時代だ。給与も年々右肩上がりというわけではなく、能力給の部分も多く、思ったほど上がっていかない場合も少なくない。そのため、奨学金返済に窮する人も出てきている。勤めたところがブラック企業で、辞めたら途端に奨学金の返済に困る人、多額の貸与型奨学金を借りて返済できず、風俗で働く人もいるという。奨学金が払えなくなると、2人必要な親族の保証人のところに請求が行く。しかもすぐに全額返済を求められるシステムだ。自己破産せざるを得ない人も出ている。奨学金を借りる場合、将来の返済計画が大切になってきているといえよう。さらに、親にしても子どもの大学での成績に注意し、就職先をチェックしておくことも必要だ。定職がないと、奨学金返済は厳しいからだ。

このような奨学金制度だが、来年から国は住民税の非課税世帯を対象に、1学年あたり2万人に対し、進学先によって2~4万円の3段階で奨学金を給付する制度を本格的にスタートさせる。同時に貸与型奨学金も卒業後の年収によって返済を猶予したり、返済額を減らしたりする措置が取られることになる。

お金があまりなくても、奨学金を活用して進学は可能だ。ただ、貸与型奨学金を借りれば、卒業後、返済が待っている。安易に借りるのではなく、借金してまで大学で学びたいのか、大学を出てどうするのか、真剣に考えて進学すべき時代になってきている。

安田賢治(やすだ・けんじ)
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。大学通信入社。30数年にわたって、大学をはじめとするさまざまな教育関連の情報を、書籍・情報誌を通じて発信してきた。現在、常務取締役、情報調査・編集部ゼネラルマネージャー。大正大学講師。著書に『中学受験のひみつ』『笑うに笑えない大学の惨状』など。近著に『教育費破産』がある。