自社の枠組みに固執せず異業種の力を活用する

ビジネスに役立つ実践的なスキルや最先端の知識を効率的に学べる場──。今、世界最大級のオンライン教育プラットフォーム「Udemy(ユーデミー)」に注目が集まっている。そんなUdemyとの連携にいち早く手を挙げたのが、日本におけるオンライン証券の草分け、カブドットコム証券である。今回の連携を主導した齋藤正勝社長に、Udemyとの異業種間連携に踏み切った経緯や狙いを聞いた。

齋藤正勝(さいとう・まさかつ)
カブドットコム証券株式会社
取締役 代表執行役社長
1966年生まれ。89年多摩美術大学卒業後、野村システムサービスに入社。第一證券を経て伊藤忠商事に入社し、オンライン証券設立事業の立ち上げメンバーに。設立に伴い日本オンライン証券(現カブドットコム証券)へ入社し、情報システム部長に就任。01年イー・ウイング証券と合併しカブドットコム証券と改称。04年より代表執行役社長を務め、05年から取締役を兼務し現職。同社を大手ネット証券の一角へと成長させた。14年には、安倍内閣の「ITコミュニケーション活用促進戦略会議」のメンバーとして我が国のIT戦略にも参画。日本経済団体連合会幹事、「金融制度委員会」、「情報通信委員会」メンバー等多岐に及ぶ活動も行っている。
 

EdTech(エドテック)で世界の学びを変えるUdemyとは

約4万5000コース(2017年1月末時点)があり、世界で1500万人が受講している。

Udemyはベネッセコーポレーションが日本における事業パートナーとして、2015年4月から提携を開始している。ユニークなのは「誰もが講師になれる」という点だろう。ビジネス、IT、データサイエンスなど、業界のエキスパートによる解説で、実用的なスキルやすぐに活用できる知識を身に付けられるというわけだ。

視聴期限がなく、PC、スマホ、タブレットとマルチデバイスにも対応している点も使い勝手がいい。ユーザーは休日や夜間だけでなく通勤中のスキマ時間なども活用し、自分のペースでじっくり学べる。時間や場所、そして国境などのあらゆる学びの垣根がなくなり、「知りたい」という思いにダイレクトに応えるところが魅力となっている。

カブドットコム証券は今年2月、国内金融機関で初めてUdemyと連携し、本格的な投資教育カリキュラム「kabu.study(カブスタディ)」の提供を開始した。提携を決めた齋藤正勝社長は、「Udemyは今後、間違いなくブレイクするプラットフォーム」と話す。

──ご自身もUdemyの受講生だったそうですね。今回の協業を決めたのは、やはりその体験からですか。

【齋藤】プログラミングでいえば、一般的なセミナーは内容の割に高額であったり、書籍だと内容が古かったりと、あまり満足感を感じませんでした。その点、Udemyはユーザー視点で作られている点が気に入っています。コースは常に最新の知識を学べて実践的。自分自身でもUdemyのデータ分析講座を受講して、オンライン学習のイメージが一変しました。今ではこんなに洗練されているのですね。何よりも受講生や講師の雰囲気が良く、盛り上がりを感じています。自社で投資教育を進めるにあたって、ぜひUdemyと連携しようと私から提案しました。

──最初に初心者向けの投資講座を開設しました。自社のHPで動画を流すこともできたかと思いますが、あえてUdemyを選んだ理由は。

【齋藤】ユーザーの学びやすさを考えれば、金融の枠組みに固執せず、最先端で使いやすいプラットフォームを活用するのが賢い選択です。やはり証券会社主導の座学やパンフレットでは、ユーザーが学びたいと思える内容にするには限界があります。こと投資教育においては、私たち金融機関は一歩引いて、黒子に徹した方がいい。ベネッセ様という教育のプロの力、そしてUdemyという成熟したプラットフォームの力を借りることで、より質の高い投資教育を提供できると思っています。

第1弾として初心者向けの投資学習コースをリリース。受講生は5000名を超えた。

──自社ではなく、外部のオンライン教育サービスを利用するのは金融機関としては思い切った取り組みです。社内外の反響はいかがでしたか。

【齋藤】やはり教育のプロであるベネッセ様の講座制作に対する知見とUdemyという場の力の効果はすごい。講習の質が高まり、受講生は1か月あまりで5000名を超えました。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)としても、今回の連携を前向きに受け止めていると思います。MUFG全体でも従来型の金融サービスのあり方を見直し、もっと暮らしに溶け込んでいくサービスのあり方を模索していた時期。フィンテックなどの影響でIT活用が盛り上がっていたこともあり、Udemyと連携しやすい雰囲気が醸成されていたのでしょう。お客様への価値提供に加え、「行員教育にも使えるのではないか」という声もあがっています。こうした期待に応えて、一番手に連携して成功することが重要です。

──今後はどのような展開をkabu.studyで考えていらっしゃいますか?

【齋藤】もっと面白く、お客様にも利益になるような仕組みを作りたいと思っています。例えばkabu.studyの成績上位者に奨学金を用意したり、お客様が講師になって成功の秘訣や失敗談を聞けるコースを実現してみるのもいいですよね。教育とはまさに「体験」を提供すること。「体験」が重視される時代にあって、その充実に意味があると思います。

──今後、Udemyにどんな展開を期待していますか。

【齋藤】私自身は、 Udemyが間違いなくブレイクすると確信しています。Udemyの魅力は、受講生が講師を選べるというユーザー主導の設計にあります。面白くて役立つ講座は人気を集めるし、そうでない講座は早々に廃れる。当社提供のコースも、お客様に叩かれて、より良い講座へと磨いていかないといけない。そしてこれから金融はもちろん、サービスやIT、製造業など業種を越えてさまざまな企業が参画していくことで、さらに盛り上がっていくでしょう。そんなUdemyといち早く連携を始めたことが、当社のアドバンテージになるはずです。

(編集後記)
取材を終えて、教育とITが融合したEdTech(エドテック)の盛り上がりを実感した。この数年でオンライン教育の場は激変し、プラットフォームが次々と誕生している。中でも、Udemyは“熱量”が違う。この変化を見逃さず、いち早く連携を決めたカブドットコム証券・齋藤正勝社長のフットワークの軽さも特筆すべきだろう。御社もUdemyとの連携から生まれる、新たな価値を次なる事業戦略に生かしてみてはどうだろうか。(森重瑛美)

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