餃子の王将は他の飲食チェーンと違い、個々の店舗でメニューが違う。店長の裁量で地域や客層に合った独自メニューを開発できるのだ。

ファミレス、居酒屋などフードサービスの経営に造詣の深い公認会計士、柴山政行氏はそうした「チェーンらしくないところが消費者にウケている」と考える。

「ファミレスが店の数を伸ばしたのは高度成長期です。その頃はまだパスタやピザを食べたことがない人もいたため、一つのブランド、一つのコンセプトで市場を席捲できました。市場が未成熟だったから、セントラルキッチンで調理した大量生産メニューを消費者は喜んで食べたのです。

<strong>立地に合わせて運営する地域密着型</strong>:注文の約8割を占める餃子、チャーハン、ラーメン、唐揚げなどは全店舗共通メニューにしている。それ以外のメニューは店長の裁量で決めることができる。
写真を拡大
立地に合わせて運営する地域密着型:注文の約8割を占める餃子、チャーハン、ラーメン、唐揚げなどは全店舗共通メニューにしている。それ以外のメニューは店長の裁量で決めることができる。

ところが今の消費者は差別化できる少量多品種のものに魅かれる傾向がある。王将は全国チェーンではあるけれど、どの店も地域に合わせたメニューや定食のセットを開発している。そういったところが画一化に飽きた消費者にウケているのです」

柴山氏はさらに王将の「小回りが利く点、値段の安さ」も不況の時代の強みだという。

「大手ファミレスチェーンがメニューを変えようと思ったら、店舗から本部へ稟議書を上げ、会議をくりかえしたのちに承認されるのを待たなくてはならない。ところが王将は店長の判断で、すぐに新しいメニューを取り入れることができる。そこは大きい。また、あるファミレスの販売管理費は売り上げの68.7%ですが、王将のそれは58%。格段に低い。販売管理費に使う金をほかのところに使えるし、商品の値段も抑えることができる。王将は数字から見ても不況に強い経営をやっています」

王将フードサービスの大東隆行社長は各店ごとに違うメニュー開発について、「それは創業期から続いている」と語る。

「商売には変えてはいけないものと、変えたほうがいいものがある。手づくり感、オープンキッチン、食材の鮮度、安さ、うまさ、グランドメニューについては変える気はない。しかし、それ以外は店長の判断にまかせている。和食や洋食を出してもいいし、セットメニューをつくってもいい。

それと経営に大事なのはスピード感や。いちいち本部にお伺いを立てていたら、時期を逸してしまう。即、行動を起こすことが人に訴える。お客さんが欲しいというものがあればつくってみる。ヒットしたらほかの店もそのメニューをやればいいし、ウケなかったらやめればいい」

王将の店舗を回ってみると、関西では天ぷらや冷麺を出しているところもある。それも食材を新たに仕入れるのでなく、届いている材料を工夫することで新メニューを開発しているのだ。天ぷらならばチリソース用の海老を使う。王将はチェーンではあるが、金太郎飴のような同じ店の集まりではなく、個性のある店の集合体なのだ。

※すべて雑誌掲載当時