日本で2010年5月28日に発売された米アップルの多機能携帯端末「iPad」を手に最初の購入者と握手するソフトバンクの孫正義社長。(写真=時事通信フォト)
データファイル▼孫 正義
ソフトバンクグループ社長
【名言】志を持て(孫正義LIVE2011での発言)
【総資産】1兆1700億円(117億ドル)*
【年齢】59歳(1957年生まれ)
【出身地】佐賀県鳥栖市
【父親】父・三憲は在日韓国人の実業家だったが、幼少期は貧困に喘ぐ
【学歴】カリフォルニア大学 バークレー校卒業
【起業まで】大学卒業後、日本に帰国し、24歳で「ユニソン・ワールド」を設立。さらに同年「日本ソフトバンク」を設立。
【結婚・家族】米国留学中に出会い、21歳で結婚。妻・優美との間に娘2人
【尊敬する人物】聖徳太子、織田信長、坂本龍馬。「この3人のイノベーターには共通点がある。当時の最先端機器をいち早く取り入れた点だ。聖徳太子は折れにくい刀、織田信長は鉄砲、龍馬は黒船」
【愛読書】『竜馬がゆく』(司馬.太郎)、『ユダヤの商法』(藤田田)、『成功はゴミ箱の中に』(レイ・クロック)
* Forbes The World's Billionaires 2016による。1米ドル=100円で換算。

「高校1年」で単身渡米。退路を断って勝負する

高校時代の孫正義は、親友にこんな言葉を漏らしている。「いつものように一緒に帰宅する際に、話の流れで孫がこういった。『僕は天才だから』」(大西孝弘『孫正義の焦燥』)

ときに経営者は、途方もない大きな目標を絶対的な自信でぶちあげる。だが、孫のそれは並外れている。

――目標は明確に口に出した方が良い。周りにコミットする事で自分を追い込んで行けるから(@masason Twitterより)

孫正義は、1957年、佐賀県鳥栖市に生まれた。在日2世の父・三憲は、後に事業を成功させるものの、幼少期は貧困に喘いだ。

「俺は今でも一番ある意味尊敬しているのはおやじだね」(前掲書)

孫は、父の影響をこう語っている。

「三つ子の魂じゃないけど、3歳ぐらいの時から、おまえはいずれ世界一の男になると。お前は天才だと、ずっと言い続けてきた」

孫少年は、15歳で司馬遼太郎『竜馬がゆく』を読み、衝撃を受ける。混乱の幕末期に、命がけで脱藩し、商売を通じて日本を変えようとした男――。そんな坂本龍馬の「志高く」という姿勢は、孫の座右の銘となった。16歳で「竜馬のような脱藩に憧れて」高校を退学し、アメリカ留学を決意する。校長や担任には「大学卒業後ではだめか。せめて高校休学にしては」といわれたが、

――僕は弱い男です。(中略)退路を断たないと、困難に立ち向かえん(「孫正義ライブ2011」)

と跳ね返した。留学先では、「肺炎になったことがわからないぐらい」というほど必死に勉強し、19歳で「人生50ヵ年計画」を掲げた。

「20代で名乗りを上げる。30代で軍資金を貯める。40代でひと勝負する。50代で事業を完成させる。60代で事業を継承する」