上限規制しても総労働時間が減らない理由

規制強化は、結果的に管理職にしわ寄せがいくことになる。それによって管理職が粗製濫造され、「名ばかり管理職」が増える可能性もある。

しかし、最大の問題は上限規制しても総労働時間が変わらない可能性があることだと指摘するのは前出のネット広告業の人事部長だ。

「上限を60時間に下げても、仕事量や仕事のやり方を変えていかなければ陰に隠れて残業する人が増えるだろう。会社としては表向き、法律をクリアしても、自宅での持ち帰り残業や早出によるサービス残業が増えて実質的に長時間労働は減らないだろう」

現在、各企業が実施している「ノー残業デー」「定時退社」のみを実施している形式的な残業規制の構図と同じだ。たとえ外から規制しても"隠れ残業"が横行することになる。

政府が実施する残業時間の上限規制は、あくまでも企業が長時間労働を是正するための誘導策にすぎない。それに実効性を持たせるかどうかは、企業自身の取り組みにかかっている。