裁判長「職業は?」被告「無職です」。なぜ、必ず無職か?

裁判では、初公判の最初に被告人の氏名、現住所、本籍を尋ね、本人確認を行う。そのときもうひとつ訊かれるのが職業。多くの場合、以下のようなやり取りになる。

裁判長「職業はなんですか」
被告人「コンピューター関係の仕事をしていました」
裁判長「今現在は?」
被告人「……無職です」

そう、たいていは無職なのだ。例外は自営業くらい。会社員だと答える被告人は極端に少ない。

裁判長「職業はなんですか」
被告人「流通関係です」
裁判長「それは事件発生時ですよね。いまもそうなのですか」
被告人「あ、無職、です」

被告人がよく言い間違えるのは会社を離れたばかりで無職の実感がないからだろう。わざわざ裁判長が念押しする必然性は不明だが、それを聞くたびに、事件が元でクビ(懲戒免職)になったんだなと思う。犯行を認めている場合はもちろん、否認している場合でも圧倒的に無職が多いのだ。

疑わしきは罰せずという言葉がある。推定無罪という言葉もある。けれど現実には、疑わしければ辞めてもらう“推定有罪”を会社は好むようだ。犯罪者、もしくはその可能性が高い社員を雇っていては社名に傷がつき、信用が落ちるという理屈だろうか。

判決が出るまでクビを切らない会社もあるとは思うが、事件を起こしたら、有能でも功績があっても即座に首を切られると考えていたほうがいい。