しかし、炭水化物ばかり摂っていてはいけません。脳のパフォーマンスを高めるためには、タンパク質、ビタミン、不飽和脂肪酸であるDHAが必要です。

脳とは神経細胞の巨大なネットワークです。脳は外側から、「知(思考)」をつかさどる前頭葉、「情(感情)」をつかさどる大脳辺縁系、「意(食欲や性欲)」をつかさどる視床下部があり、視床下部の中心には、「A10(エーテン)細胞核」があります。A10細胞核は1万4000の細胞からなり、大脳辺縁系や前頭葉に神経繊維を伸ばし、そこからシナプスを通じてドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質を放出することによって情報の伝達を行います。

イラストレーション=中川原 透

ドーパミンは快感ややる気をもたらし、学習能力や運動能力、記憶力を高めます。セロトニンは精神の安定と安らぎをもたらし、睡眠の質を高めます。ドーパミンが不足すると認知症の原因となり、セロトニンが不足するとうつ病の原因になるといわれています。

この重要な神経伝達物質の原料となるのは「アミノ酸」です。人間の身体をつくる20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で生成されますが、トリプトファン、リジンなどの9種類は食物からしか摂れません。これらは「必須アミノ酸」と呼ばれ、タンパク質を分解してつくられます。脳の神経伝達のためには、タンパク質が必須なのです。

タンパク質が多く含まれるのは肉、魚、大豆、乳製品です。十分な神経伝達物質を生成するには、体重1キログラムに対して1日約1グラムのタンパク質が必要だといわれています。