「販売方法の進化」経営を推進する4つのポイント

時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することだ。

進化経営の詳しいプロセスは、『価値づくり進化経営http://www.jmca.jp/prod/2433』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(10)販売方法の進化に取り組んだ東海バネ工業の事例から、企業が取り組むべき新たな販路の開拓を通じて、経営を進化させていくポイントを4点抽出する。

(1)4つの経営方針を明確に定め、その方針を実現する仕組みを考え出す

東海バネ工業は
「価格競争と値引き販売を一切行わない」
「機械に依存せず、職人の技術で製作する」
「微量の注文だけを受ける」
「納期が守れる注文だけを引き受ける」
という4つの経営方針を明確化し堅持している。

この4方針に沿って社内の仕組みをつくり上げ、企業の独自性と強みを創造した。「何をするか」を考える前に、『何をしないか』を決めることが、強みの源泉になる。

(2)顧客への対応を高度化させ、「言い値」販売を実現する

東海バネ工業は顧客が望んでいるのは価格よりも「スピード」にあると判断。顧客から問い合わせが入ると、見積もりと納期を即座に提示できるシステムをつくり上げ、さらにシステムを継続的に高度化させた。

「価値」を求める顧客は、「特注」「オーダーメイド」「故障による緊急性」「機会損失(チャンスロス)」「既製品では代替が利かない」「要求する品質が高い」「顧客の仕事の質が高い」といった傾向を備えている。こうした顧客に最適な仕組みと販売方法を用意することだ。

(3)顧客が必要に迫られてネット検索する場面に狙いを定め、ネット上にコンテンツを用意する

顧客が必要に迫られてネット検索する場面を洗い出し、そこに狙いを定めて自社の情報をネット上から絶えず発信(更新)すれば、潜在需要は顕在化できる。顧客がネット検索する際に、自社を探す検索キーワードは何かを特定し、ホームページのコンテンツに連動させる取り組みが必要だ。

(4)リアルとバーチャルを組み合わせて、販売方法を工夫する

コストのかかる人的営業(訪問営業・巡回営業)と、人が対面しない非人的営業(ネットやFAXや電話注文)を、既存顧客と新規顧客、さらに顧客単価と購入頻度によって組み合わせ、最適な仕組みを構築する。

新規顧客を増やすには、他社では入手できない専門的な情報を定期的に自社のHP上に掲載し、アクセス数を高める取り組みも必要になる。競合他社にない優位性を発揮するには、自社の立ち位置を明確化し、モノづくりの体制から販売方法まで独自性を発揮し、仕組みをつくり上げることに尽きる。

高収益企業は卓越したモノづくりに加え、新たな販売方法の開拓と受発注の仕組みづくりにも注力しているのだ。

酒井光雄(さかい・みつお)
1953年生まれ。学習院大学法学部卒業。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれたマーケティングのコンサルタント会社、ブレインゲイト代表取締役。著書に『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版社)、『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書(マイナビ 監修)』など多数ある。日経BP社日経BP Marketing Awards(旧名称 日経BP広告賞)の審査委員を務める。
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