まずは定年後に「兼業・副業コース」設置

とはいえ、企業として積極的に容認・推奨するかと言われると、二の足を踏んでしまいます。先ほど述べたような不安が、経営者や人事担当者の頭をよぎるからです。

まずは、定年再雇用後のシニア社員、そして役職定年者に限定した解禁を提案したいと思います。定年再雇用者に対して、明確に兼業・副業禁止を定めている会社は少ないでしょう。しかし、正社員時代の延長でシニア社員の側も、なんとなく禁止と思っている。また、再雇用後も原則フルタイム勤務にしている企業が多いため、時間的な制約もある。

そこで、定年後の働き方に「兼業・副業コース」を設定し、週3日勤務や週4日勤務を選択できるようにしてはどうでしょうか。定年を迎えて、いきなり起業や転職をする勇気は持ちづらいですが、一定の雇用と収入を確保した上であれば、第一歩が踏み出しやすい。

一方、大企業を中心に導入されている役職定年制度。主に管理職が、56歳とか58歳といった年齢に達すると、部長や課長といった役職からはずれるしくみです。

役職定年者は、それまでの役職から降りるものの、会社を退職するわけではありません。後任管理職の補佐やプレーヤーとして勤務を続けるのですが、明確な役割が提示されず、手持ち無沙汰になっている人も少なくありません。

シニア社員に加え、役職定年者にも、兼業・副業の先鞭役となってもらうのです。

こうすることで、50代以降の働き方に選択の幅が広がります。特に管理職まで勤めた優秀な人が、自社内では後人に役割を譲ったとしても、長年の経験を生かして社外でも活躍できるのであれば、社会的価値があるのではないでしょうか。企業情報などの問題に対しては、競合企業との兼業禁止などを定めておけばいいでしょう。逆に、他社から兼業人材を受け入れることで、さまざまな企業のノウハウを手軽に活用できるかもしれません。

シニア社員、役職定年者で試してみて、上手くいくようなら、その後に全社員への適用を考えるのが、多くの会社の現実的なステップではないでしょうか。

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