自動翻訳、小学校英語教育で、英語教育市場はどうなる?

【田原】英語教育市場の展望はどうですか。日本人の英語熱は高まっていますが、一方で自動翻訳の技術も進んでいます。

【藤岡】グーグルの翻訳はたしかにすごい。私が訳すより正確です(笑)。英会話業界にとって、あれは脅威というよりプラスですよ。英語のWebページを簡単に読めるようになれば、次は自分の言葉でしゃべりたいという欲求が出てくると思うので。

【田原】小学校で英語の教科化が決まりましたね。あれはどうですか。

【藤岡】チャンスです。小学校からきちんと英語を教えれば、将来はフィリピンみたいに日本人もみんな英語を話せるようになって、大人向けの英会話学校はなくなるかもしれません。ただ、そういう時代になっても小学生はまだ英語を話せないわけで、そこに私たちの出番があるだろうと。

【田原】どういうことですか。

【藤岡】学校にはスピーキングを教える先生がいないので、外部を活用して単位を認定していく学校も出てくると思います。ただ、一般のオンライン英会話学校は大学生がアルバイトで教えているから単位認定プログラムに適さない。私たちはプロ教師ですから、その点はクリアできます。実際、学校からの問い合わせが増えています。すでに今年度から福岡県飯塚市の22の小学校にQQイングリッシュが導入されていますし、ほかにも市町村単位で採用を検討しているところがいくつかあります。

【田原】じゃ英語教育のニーズはそう簡単になくならないですね。

【藤岡】はい。さらにいうと、教えるのはべつに英語じゃなくてもいいと考えています。オンラインでアメリカ人に数学を教えたっていいんです。インターネットを使った教育システムは教育の大革命で、400兆円といわれる世界の教育市場を根底から変える可能性を秘めています。でも、IT業界でもっとも強いアメリカ人は英語ネイティブなので、オンライン教育の革命性にまだ気づいてない。そういう意味では日本企業に大きなチャンスがあるし、ぜひその革命を自分の手でやってみたいと思っています。

インターネットで教育に革命が起こった

【田原】ところで、セブ島にはいま若い日本人起業家がたくさん集まっていると聞きました。藤岡さんの学校出身の人も多いそうですね。

【藤岡】そうですね。うちで英会話を習った卒業生が自分で英会話学校をつくったり、IT企業やレストラン、貸事務所の事業をやったりしています。ぜんぶで20数人はいますね。英会話学校は競争相手になるわけですが、みんなで切磋琢磨しながらセブ島を盛り上げてくれたらいい。当然、私も簡単に負けるつもりはありません。


【藤岡】教育は400兆円産業で、もともと一社じゃ革命は起こせません。ですから、同じような志の仲間が増えるのは大歓迎です。ただ、信頼できない会社が増えるのは困りますね。

【田原】ライバルが増えるのはかまわない?

【田原】これからさらに競合も多く出てきそうですね。

【藤岡】はい。業務提携していた上場企業に、私たちの東京オフィスの代表とスタッフをごっそり引き抜いて新会社を設立されてしまいました。フィリピンの先生たちは私たちの味方なので影響はないのですが、やり方がひどい。

【田原】それは大変でしたね。

【藤岡】いま弁護士の先生と相談して、法的な対応も準備中です。

【田原】ベンチャーが大企業を訴えると、向こうも黙っていないでしょう。返り血を浴びるかもしれませんよ。

【藤岡】そこは悩みどころです。たしかにリスクはありますが、自分たちがやっていることは大企業に盗まれるほど正しかったということを世間にアピールする機会にもなりますし。また相談させてください。

【田原】わかりました。何かあったらいつでも話を聞きますよ。頑張ってください。

藤岡さんから田原さんへの質問

Q. 田原さんは英語を話せますか?

【田原】僕は英語が得意ではありません。普段は困りませんが、ブッシュ大統領(息子)へのインタビューが決まったときはさすがに焦りました。通訳は同席させないという条件だったからです。

インタビューの準備で、まず質問事項を通訳の方に英訳をしてもらいました。でも、それを読んでもピンとこない。知らない単語がたくさん並んでいて、自分の言葉に思えなかったからです。そこで現地の別の通訳の方に頼み、直前に難しい単語を外してもらいました。

おかげでインタビューはうまくいきました。答えにくい質問もぶつけましたが、ブッシュは逃げずに丁寧に答えてくれた。コミュニケーションは日本語も英語も同じ。自分の言葉で話すことに意味があるのだと思います。

田原総一朗の遺言:自分の言葉で話せ!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、
freee代表・佐々木大輔氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、2月27日発売の『PRESIDENT3.20号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
【関連記事】
フィリピン・セブ島語学留学ってぶっちゃけどうなの?
セブ島留学の新潮流と欧米留学との比較
英語公用語化で苦戦の社員。4週間フィリピン留学した結果は?
面白くて勉強がやめられなくなる「英語の小説&マンガ」
スマホ「英語勉強アプリ」実力ランキング