2つ目は“写真の使い方”。私たちは本人を見るより先にポスターを目にします。先に写真が出回るので、大切なのは本物とギャップがないようにつくること。女性の候補者にありがちなのが、とても美しい人物写真。ポスターのあとで本人を見て「あなたがあのポスターの人?」と言われるような写真があります。これはNGです。

私たちビジネスウーマンも、ポスターこそつくりませんが、フェイスブックやブログ、SNSで写真が出回っている方もいることでしょう。いいところしか写真で見せない人を、見ている人は無意識に「この人はうそつきだ」と思います。それは、何か仕事をしていくうえで、失敗を隠すとか、いいところしか報告しないとか、そういう人と思われる危険性をはらんでいるということ。つまり信頼性が落ちるのです。ですからビジネスウーマンであるなら、なるべくリアルとのギャップをなくすことが大事です。そこで、ぜひ試してほしいことは、SNSにどんな写真が出ているか把握すること。あまりにプライベートな写真が出ていないか、アプリで補整した美人すぎる自分が出ていないか、いま一度チェックしておくとよいですね。

3つ目のスキルは“キーフレーズの作り方”。選挙においては、各党・各候補者は“マニフェスト”として、自分の実現したいことを宣言します。そこには必ず覚えやすく短い“キーフレーズ”があります。私たちも自分の仕事に対する考え方をキーフレーズにまとめておきましょう。

自分は何をしたいのか、会社にどのように貢献できるのか、まずこれらを明確にして語ることが基本中の基本です。ありがちなのが、ビジョンは見えている、日々考えている、頑張っている、けれど、いざ口に出すとまとまらない……。これではチャンスを逃してしまいます。“エレベータートーク”という言葉をご存知でしょうか。これはエレベーターに乗っている30秒の間に自分を売り込むことです。たまたま社長と乗り合わせたというようなチャンスが来たときに、30秒で端的に売り込むにはキーフレーズが必要です。

大勢の候補者の中から自分を選んでもらうという行為は、私プレゼンと似ている

そして、このキーフレーズは、13文字以内にまとめましょう。たとえば安倍首相のキーフレーズは“ニッポン一億総活躍プラン”。12文字です。自分のしたいことを13文字以内の短いキーフレーズにすると、エレベータートークでチャンスをつかむことができるようになります。キーフレーズを口にして、相手が「何それ?」と興味を持ったら成功。この時点で中身はわからなくてもいい。言葉の響きからメリットが伝われば、くわしくはあとから話せばいいのです。

このキーフレーズの作り方は、3つのスキルの中でも選挙期間中に特に注目してほしいポイントです。女性の候補者なら「仕事と子育ての両立」「民間で経験したこの仕事を国政に」といったマニフェストを掲げている人がいるかもしれません。よいキーフレーズを使っている人がいたら、ぜひよい見本として私プレゼンに取り入れてみてください。

矢野 香
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号を取得。現在、国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。全国から研修・講演依頼があとをたたない。著書に『「きちんとしている」と言われる「話し方」の教科書』(プレジデント社)などがある。http://www.authenty.co.jp/

池田純子=構成 米山夏子=イラスト