「スマホ」の考案者はシリアからの移民の子

デモで掲げられた「移民がアメリカを偉大にする」――「入国制限」の大統領令に対し、全米各地では抗議デモが起きた。写真は1月29日、米西部サンフランシスコ国際空港での様子。トランプ大統領の主張「アメリカを再び偉大にする」を踏まえて、「Immigrants Make America Great(移民がアメリカを偉大にする)」と書かれたプラカードもあった。(時事通信フォト=写真)

トランプ米大統領が出した「入国制限」の大統領令が、混乱を巻き起こしています。1月27日の大統領令では、シリア難民の受け入れを停止し、シリア人以外の難民も120日間停止。さらに「テロ対策」として、イラン、イラク、スーダン、ソマリア、リビア、シリア、イエメンの7カ国について、一部の例外を除き90日間入国を禁止するとしています。当初は米国の永住権をもっていても入国できない場合があり、空港で家族が引き離されるなど混乱が起きました。

これに対し、ワシントン州は同州の裁判所に大統領令の差し止めを訴え、2月3日に一時差し止めの判断が下りました。トランプ政権は控訴しましたが、裁判所は訴えを却下。現在、大統領令は全米で停止中です。入国制限を実施するには、今後、最高裁の賛同を得る必要があると報じられています。

こうした混乱は、むしろ日本にとってはチャンスだといえます。

米国の競争力の源泉はダイバーシティ(多様性)。ハイテク産業で有名なシリコンバレーは世界各地から優秀な人材を受け入れてきました。大統領令を受けて、アップル、グーグル、マイクロソフトなど100以上の企業が「米国のビジネスを損なう」として裁判所に意見書を提出しています。

米国企業が危機感をもつのは当然です。たとえば約70兆円(6470億ドル)と世界一の時価総額を誇るアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏の実父はシリアからの留学生、移民です。移民を制限すれば、ジョブズ氏はアメリカに生まれなかったかもしれません。

一方、日本はこれまでダイバーシティの面できわめて消極的でした。移民と聞いただけで、拒否反応を示す人が多い。しかし、金融などで活躍する高度人材と一般的な移民とは異なります。

私は東京をアジアでナンバーワンの「国際金融都市」として復活させたいと考えています。そのためには東京に世界中から高度人材を集めてくる必要があります。そのとき米国の「入国制限」はチャンスです。トランプ大統領からの「プレゼント」といってもいいかもしれません。英国でもEUからの離脱、いわゆる「Brexit」で人材流出が起き始めています。そうだとすれば東京が受け皿になればいいのです。これから国家戦略特区制度を活用しながら、制度を整えていきます。

私は「東京大改革」のひとつとして、ダイバーシティの重要性を訴えています。それは海外から高度人材を受け入れるというだけではありません。さまざまな面から多様性を高めていくことが、課題解決と成長創出につながるのです。