3. 普通に過ごせば悠々自適な老後が待っている?

フランス人は人生を3分割して設計しているという。

幼年期から大学までが第1段階。伴侶を求めたり、子どもを持って家族をつくるのが第2段階。第3段階は、定年後の生活だ。

第3段階では、都市に住んでいる人は家を売って、「南仏のような暖房費のかからない地方の低額住居を購入して、悠々自適の老後を送る」というのが典型的なパターンのようだ。

しかし、その豊かな定年後につながる第1段階、第2段階において、フランスでは基本的に学費が無料であることの影響はあまりにも大きい。

また、「18歳になればアルバイトをして経済的に親から自立し、親のすねはかじらない習慣」があり、就職するまで親が子どもを養うことの多い日本の一般的な家庭の支出のあり方とも様相が決定的に異なる。

先に見たように、エパーニュロジュモンを続けていれば、日本よりも住宅ローンを組むのはたやすいこともあり、若いうちから住宅購入にお金をまわすことが可能だ。

むろん外食はあまりしない、極力ものを買わないなど、お金を使わない生活が身についていることも、老後の優雅な暮らしにつながっていることは言うまでもない。

吉村葉子
神奈川県生まれ。立教大学経済学部卒業。生活文化研究家。20年間のパリ滞在経験を通じ、フランスおよびヨーロッパ全域を対象に取材、執筆を続ける。近著に『人生後半をもっと愉しむ フランス仕込みの暮らし術』(家の光協会)。

イラスト=ヨーコチーノ