缶詰同様に、食品を詰めたあとで加圧加熱処理が可能

そして2003年、同社ではさらに画期的な技術を開発した。テトラ・リカルトと名付けられたこの技術のポイントは、充填及び殺菌のための加圧加熱処理を紙容器のまま行えるようになったところにある。つまり、従来の紙容器は水分や熱に弱いため、100~130度の蒸気を加えて加圧する充填過程に使うことができなかった。特にスープ、カレーといったいわゆるレトルト食品については、高温加熱・加圧することが調理の一過程ともなる。必然的にこうした食品は、缶や瓶、あるいはレトルトパウチ入りに限られていた。

テトラ・リカルトの構造。高熱に耐えられるポリプロピレンを使うことで、高温加熱が可能になった。
缶詰と同様、釜に入れて、容器の上から加熱・加圧調理ができるのがポイント。

紙容器が持つメリットに加え、加熱充填処理を行うことができるようになったことにより、さらに汎用性が高まったわけだ。缶や瓶・レトルトパックの代替用品として、現在、約50カ国で、150ブランドに及ぶテトラ・リカルト商品が販売されている。欧米のスーパーなどでは、スープや食品素材の陳列棚で缶に代わってテトラ・リカルトがズラリと並ぶ光景も見ることができる。

開発から10数年が経ち、このたびそのテトラ・リカルトが日本市場に本格導入されることになった。導入を担うのは、テトラパック・グループの日本法人である、日本テトラパック。ビジネス開発マネージャーの坂尾伸一氏が日本及び韓国への導入を専門に担当し、企画を進めている。

「そもそも、日本はレトルトや缶詰食品の消費が非常に高いことから、重要な市場として注目されていました。今後高齢化、少人数世帯・共働き世帯の増加、個食化といった日本の市場ニーズに、テトラ・リカルトの持つメリットが非常にマッチしていると感じています。また、持続可能な容器として、今世界的に広がっている環境配慮のニーズに応えられる商品です」(坂尾氏)。

実はテトラ・リカルトは今までにも、限定的に日本にも輸入されていた。トマトピューレ、ボイルした豆、コーンなどの調理素材である。2005年頃から輸入されすでに10年が経つが、ここ数年で急激に販売が伸びているそうだ。2016年秋に開催された「東京国際包装展 Tokyo Pack2016」などの専門展示会でも多くの問い合わせが寄せられたという。3月7日から幕張メッセで開かれる「FOODEX JAPAN 2017」にも出展予定だ。

「スープなどの調理済み食品については、女性が働く世帯が増えたということで、海外では数年前から拡大傾向にあります。その波が日本にも訪れたと見ています。また環境やオーガニック食品への関心が高まったことも、背景にあると思います」(坂尾氏)。

中身を詰める前のテトラ・リカルト。現在は200mlから500mlまでサイズ展開している。