女性の活躍も期待されるダイバーシティ時代。企業・大学・個人はどうあるべきか──。ともに渋谷が本拠地の國學院大學・赤井益久学長とイー・ウーマンの佐々木かをり社長が語り合った。

いまや女性の登用は企業の成長戦略

個性と共生の調和を使命の一つとし真の「大人」を育みます

赤井益久(あかい・ますひさ)
國學院大學 学長

【赤井】少子化の今日も、実は大学生の数は減っていません。女子の大学進学率が高まっているためで、國學院大学も全学生の4割が女子。特に文学部は6割です。大学経営も女性の目線に立った制度構築などが一層求められています。

そして日本の労働形態も大きく変わった今日、女性の存在感は本学在学生の活躍を見てもますます高まっていると肌身で感じます。

【佐々木】男女雇用機会均等法ができた30年前と比べると、女性が働くことに積極的になりましたよね。企業側も女性の活躍に限らず、タイバーシティを重視するようになってきました。しかしまだ組織の方針や制度にとどまっている例が多いと思います。つまり男性の社員や経営陣一人ひとりの意識改革がこれからの課題といえるでしょう。

日本の成人の読解力と数的思考力は世界一位(※1)なのに、男女格差は残念ながら、世界144カ国中111位(※2)。大きな原因の一つは、企業の女性管理職が少なすぎること。日本は、一番有能な資源を使っていないのです。男性リーダー達は、要職に女性を登用することはCSRでなく、企業利益を生み出す成長戦略だと理解することが必要です。

【赤井】多くの日本人女性に教育が行き届いていても、その能力が十分発揮されずにいる。それは私も強く同感し、残念に思います。大学も企業と同様、女性職員や女性研究員の増員をもっと前向きに考えねばなりません。さらに、女子学生の就職支援にあたっては、佐々木さんをはじめとする多くのロールモデルを選択肢として認識しておく必要もあります。

社会への適応力や開拓能力を養成すべき

ダイバーシティの尊重とは、自分の存在で周囲にプラスを生み出すことです

佐々木かをり(ささき・かをり)
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長

【佐々木】確かに、働き方にたくさんの選択肢や可能性があることを知ることは大切ですね。ワーキング・ウーマン/マザーが持つ可能性や楽しさを想像できない女子大生にお会いすることもあります。私は年に一度、国際女性ビジネス会議を開催していますが、そのような場所に積極的に参加してたくさんの事例をみることも楽しいでしょう。

【赤井】本学はミッションのなかで「個性と共生の調和」を掲げ、違いを理解し、認め合い、尊重し合える人材の育成を目指しています。

かつて日本には1つの価値観が重きを占め、それ以外を否定的にとらえていた時代がありました。しかし例えば森の木々でも、スギは木材として役立ち、ブナは木材に適さなくても、森全体を保水するという大切な役割を果たします。同じように、ダイバーシティもいろいろな角度から見る必要があるでしょう。

【佐々木】そうですね。いまや知識があることだけでは評価されません。年齢がいくつになっても知識や情報を吸収し続ける姿勢や、加えて複数の情報をつなぎ合わせる、あるいは答えのないことに立ち向かい、道なきところに道をつくれる力と情熱にあふれた人材が待たれます。ダイバーシティ社会で大切なことは、自分の考えを伝えることができること、自分を役立てて周囲の人たちとプラスの成果を作ることができることです。

國學院大學の「アクティブ・ラーニング」では、実際の企業とも連携。学生が調査、研究にとどまらず、学部生の前で発表を行い、評価も受ける。

【赤井】本学は今後、自分の人生に責任を持って主体的に生き、変化する社会への適応力や開拓能力を備えた「大人」の育成に力を注ぎたいと考えています。そのために、授業ではアクティブ・ラーニング、つまり自分で調べ、発見し、結論をまとめて発表するという学修形態を一部で拡大しています。知識を与えられる座学も必要ですが、カギは、いかに能動的に学び続けられる人材を育成していくか。

そして私は、日本の歴史という時間軸と、グローバル社会という空間軸を交差させ、自分の個性を認識し、相対化できることも、大人として必要な条件だと考えています。

未来の幸せのために自分で自分を動かす

【佐々木】時間といえば、私はアクションプランナー時間管理術を教えています。自分で自分を上手に動かすと満足度が高まり生産性も向上する。主体的に自分の意思でこのハッピーなサイクルを維持することが大切です。そのために時間全体をみて、自分を予約する簡単な方法を企業や自治体、学校等で教えているのです。ワクワクできる力を持っていた方がいい人生だと思います。

【赤井】多くの人は仕事優先の日常生活かもしれませんが、自分を楽しみ、自分の人生を生きられる「自分」であることが大事ですね。

【佐々木】ポイントは多様な人生を切り開くのは一人一人の意思だということ。

【赤井】仕事も企業も生き方も多様ですから、成功もあれば失敗もあります。いろいろなことに自ら挑戦し、失敗も経験すれば自分の視点と選択肢が増えていく。國學院大学は、それに気づく場所であり続けたいと思います。

(※1)OECD, 2013年
(※2)WEF(世界経済フォーラム), 2016年