2017年2月24日(金)

北京・上海・四川・広東「四大中華物語」

dancyu 2015年5月号

文・藤井美夫

中国料理を語る上で軸となる「四大中華」。奇しくも、東西南北に散らばり、味の違いも一目瞭然。ならば食べながら、もう一度「四大中華」を見直そう!

東酸西辣、北鹹南淡

中国の地方による味の好みを表した言葉で、漢字を見ればなんとなく意味がわかる。

「東は酸っぱく、西は辛い、北は塩辛く、南は淡い」

これを具体的な地域に重ね合わせたものが中国の「四大菜系」であり、日本で「四大中華」と呼ばれるものである。

東は上海市、西は四川省、北は北京市、南は広東省の、日本人になじみの名を冠したこの4分類は、シンプルだからこそ理解しやすく、食べ手にとって便利なツールになる。

●北京料理
北京ダックやフカヒレのスープなど、豪華な食材を使う宮廷料理と、北京近郊の郷土料理が交ざり合った料理。小麦文化で饅頭や麺類が主食。シンプルな塩と醤油の味つけで、四川料理ほどではないがたっぷりの油で調理するため、意外とハイカロリー。

●上海料理
揚子江下流域という土地柄、魚介類が豊富で、期間限定の上海蟹は有名。醤油、砂糖、黒酢などの調味料を使い、甘辛の東坡肉や、酢豚のように甘酸っぱい味など、ご飯によく合う料理が多い。小麦粉を使った料理も多く、その代表が小籠包である。

●四川料理
多湿で季節の寒暖差が大きいゆえに、食欲増進を促す辛い料理が発達。特に花椒のしびれる辛さは四川料理ならでは。代表料理の“麻婆豆腐”や“担担麺”“回鍋肉”などは、1960年代に陳建民氏が日本の調味料を使って紹介したのが始まりで、今でも不動の人気。

●広東料理
香港を中心とした中国南部で食べられ、世界的にも有名な料理。海に近い温暖な土地で、魚介や野菜の種類が豊富。味つけは、素材の持ち味を生かすため薄味に仕上げ、油は控えめ。牛肉のオイスターソース炒めや蟹玉、豚や鴨などの焼き物が代表料理。

たとえば、四大中華の視点で料理を食べれば、食の歴史や土地の嗜好に裏打ちされた、その料理が求める「おいしさの方向性」と言うべきものが、くっきりと見えてくるからだ。

「旨い、まずい」の判断基準になるのはもちろん、料理のもつ本質的な魅力にすら気づかされることだろう。

たとえば四川料理の枠を超え、広東や北京料理の店でもつくられている“麻婆豆腐”。料理人のアレンジも加わってどんな味に変化するか。その違いを楽しむ食べ方も、「四大中華」の味の基本を知っていればこそだ。

個性あふれる料理の系譜、その集合体こそが中国料理であり、魅力でもある。まずは四大中華、それぞれの名物料理を食べてみるところから始めようか。

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