富裕層は人生の悲しみを減らすことができる

さて、漁師と旅行者の話に戻りましょう。もし、漁師が「今のままの生活で十分だよ」「生活に満足しているのに、なぜ頑張らないとだめなの?」と感じているとしたら、それは、未来永劫自分に災厄が起こらないと楽観的に考えているからではないでしょうか。

実は、オリジナルストーリーの終わりは、こうなっています。

▼逸話のつづき▼

「でも、僕は、もうそうしているよ(お金を稼がなくても幸福に暮らしている)」

そう漁師に教えられた旅行者は物思いに沈んで、漁師に対する同情(大金を得る好機を逃し、その日暮らししている)など消え去って、逆に、漁師をちょっぴり羨ましく思いながら立ち去ります」

▲以上、逸話つづき▲

漁師の生き方のほうを支持するラストになっています。でも僕なら、こういうふうにラストを締めます。

「僕はもうここにいるよ」

つまり、漁師は実はすでにひと財産作ったあとで、仕事ではなく単なる楽しみで漁師をしていた、という設定。MBA旅行者が20~25年かけて到達すると語ったステージに到達済みで、自然災害など不測の事態が起こってもその生活を将来続けるだけの資力が十分にあった、と。そんな結末にしたいですね。

ブリティッシュ・コロンビア大学と、ミシガン州立大学の教授らがアメリカ人1万2291人を調査・分析した結果(2015年)、面白いことが分かりました。

収入(の多さ)は日々の幸福感をもたらすのにほとんど影響はないが、悲しみのようなネガティブな感情を減らすのに役立つ、と(参照:https://www.researchgate.net/profile/Kostadin_Kushlev/publication/271732463_Higher_Income_Is_Associated_With_Less_Daily_Sadness_but_not_More_Daily_Happiness/links/54dbc58b0cf28d3de65cc05d.pdf

なぜ、収入(お金)がネガティブな感情を減らすのに役立つのか。それは、ネガティブな感情を引き起こす事柄・事象に対して、お金持ちが(対策として)費やす時間は、お金がない人に比べて少なくできるからなのです。

例えば、雨漏りが発生した場合、お金持ちはすぐに修理することでストレスを解消できますが、修理代を支払う余裕のない人にとってそれは数カ月にも及ぶ苦しみにもなる。

お金持ちは悲しい事態に対しても、それを一定程度コントロールできると感じているため、お金がない人々と比べて悲しみを和らげることができるのです。

お金は幸福を増やすものというよりも、悲しみに対する緩衝材の役割を果たすというのがこの論文の結論です。

漁師に訪れる災厄の緩衝材、それこそが富ではないでしょうか。

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