もう1つは、小池氏の動向に世間の注目が集まるのと比例して、投票率が11ポイント超も上昇した事実だ。支持政党がない無党派層は3割超も存在するといわれており、その無党派層が投票行動で自民党に「NO」を突き付けている。小池氏周辺は「都議選の投票率も10ポイント以上は上昇するのではないか」と見る。この10ポイントが、小池氏が支援する「小池印」に雪崩を打った場合、組織票で手堅い選挙戦を展開してきた自民党候補といえども大打撃を受けるのは必至だ。危機感を強める自民党、民進党からは離党して「小池印」をもらおうという小池詣でが始まっている。

ある自民党幹部は「都議会自民党はもはや都民からそっぽを向かれている。それを修正できない限りは都議会自民党に未来はない」と語り、その理由に「3人衆」の存在を明らかにした。「3人衆」とは小池氏が都議会のドンと名指しする内田茂都議、菅義偉官房長官、石原伸晃経済再生相を意味するという。この幹部は区長選前に「あの3人は都知事選敗北の『戦犯』だ。その不人気さは際立っているから前面に出さないように」と地元で助言を受けた。だが、内田氏は裏方に徹したものの、他の2人は推薦候補の応援に回った。与謝野氏は「代理戦争」を否定するのに躍起となったが、現職官房長官や丸川珠代五輪相など政府・自民党を挙げての応援態勢は、それを際立たせたといえる。

都議会で圧倒的多数を占める自民党だが、友党である公明党は小池氏との連携を強め、民進党や共産党など野党も「対自民」で共闘を図る方針だ。安倍晋三首相は今秋の衆院解散・総選挙を模索しているが、小池氏は都議選で64人以上の候補者を擁立し、単独過半数を目指す。7月の都議選で自民党が大敗すれば、首相は解散を打てる環境ではなくなり、2018年に「追い込まれ解散」となる可能性もある。世界では「トランプ旋風」が耳目を集める中、国内で勢いを増す「小池旋風」。安倍首相の苦悩は続きそうだ。

(時事通信フォト=写真)
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