ビジネスで培ったマネジメント能力が不可欠

そこで活躍している人材は、ドクターや医療技術者といったメディカルから育ってきた人たちだけではありません。ある意味で、巨大な計画を推進していくわけですから、戦略構想力や組織マネジメントに秀でたスタッフが不可欠になってきます。つまり、民間でビジネス感覚を磨いたプロフェッショナルにほかなりません。

彼らに求められる要件は、ほぼ共通しています。大枠としての政策を見据えつつ、計画を着実に遂行する柔軟性などです。そして、その問題を解決、遂行できる人であれば、いくつもの業界から広く人材を集めるという発想がベースにあります。

当社も、いくつかの地方で医療事業拡大のプロジェクトに関わってきました。ある地方都市の場合、大手電機メーカーの元役員、そして、サービス業大手の元役員をスカウトしています。いずれも経営戦略企画・実行者としての役割で入職(入社)されました。このポジションは、様々な業界が連携して事業価値を作り出す「協創」の時代突入を背景に、医療界も他業種との連携も必要となることから、医学界しか経験していない人では対応に限界が生じてしまいます。

医学界の慣例や仕組みというものを理解したうえで、医療事業が価値を持続的に生み出す為に、その企画立案から、資金・スタッフ等の資源を調達して、最適配置・配分し現実に導くまでの役割を求められてきますので、ビジネスで培ったマネジメント能力とリーダーシップが光ることになります。それと同時に行政関係者や地域住民から街づくりの核としての期待もあり、単に専門能力だけでなく、豊かな社会性・公共心・公徳心にあふれていることも重要な資質と言っていいでしょう。医療・介護が、産業に切り替わったとしても、やはり公共事業的側面は強く残るからです。

また日本の場合、技術立国、観光立国ということが盛んに喧伝されてきました。もちろん、この2つの柱は欠かせない成長戦略ですが、3つ目の柱が医療・介護だというのが、私の確信です。地域によっては、特定の工業も観光資源もないかもしれません。むしろ、地方ではそうした場所のほうが多いと思います。そんなところこそ、メディカルによる活性化が事業モデルになっていくことは間違いありません。

おそらく、何もしなければ地方の活力はどんどん削がれていってしまうでしょう。そこで医療・介護を強力なエンジンにしていくわけです。この分野では、絶対に地域間格差があってはなりません。しかも、持続可能性も検討していかなければなりません。当然、長期的視点に立ったプログラムづくりが必要になりますから、優秀な人材の確保が急がれるのです。

武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン
1968生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て19年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かしている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、驚異的なペースで飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務、08年1月社長、17年1月会長、半蔵門パートナーズ社長を兼任。
(取材・構成=岡村繁雄)
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