自己資本比率は3割以上が鉄則

――今後の成長に向けてどのような目標値を設定していますか。農業経営で収益を上げていくためのポイントがあれば教えてください。
本社前にて、トーマツの大和田氏と。

【澤浦】自己資本比率がとても大事だと思っています。これを実感したのは、震災のときです。震災で当社の主力である有機食品が売れなくなり、利便性を打ち出した惣菜キットの製造販売を始めたことはすでにお話ししました。

ただ、惣菜キットの製造を始めるにしても、売上が激減しているため投資ができない。そこで借入を増やして総資産を増やしたのですが、それができたのは自己資本が30%あったからです。借入を増やしたことで自己資本比率は20%まで落ちましたが、いまは徐々に戻りつつあります。

中小企業では自己資本が最低でも3割は必要だと言われますが、その通りだと思います。従業員が増えていくにつれ、自己資本も厚くしていく必要があります。そうでなければ、経営が傾いたときに、解雇やリストラに直結してしまいますからね。従業員が安心して働けるために、自己資本比率3割を維持することはとても大事だと思います。

――その意味でも、毎年の利益をどう使うのか、どれだけ投資にまわし、どれだけ内部留保にまわすのかは重要なポイントだと思います。そのあたりはどうお考えですか。

【軽部】自分では経常利益10%が理想だと思っています。ただ、正直なところ、それは過去に一度しか出したことがないですけれどね。

(後編に続く)

有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのメンバーファームの一員である。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援等を提供する、日本で最大級の会計事務所のひとつ。
農林水産業ビジネス推進室
農林水産業ビジネス推進室はトーマツ内の農業ビジネス専門家に加え、農業生産法人などの農業者、小売、外食、食品メーカー、金融機関、公官庁、大学他専門機関など外部組織と連携し、日本農業の強化・成長を実現するための新しい事業モデルの構築を推進している。詳細はWebサイト(https://www2.deloitte.com/jp/aff)参照。
(大和田悠一(有限責任監査法人トーマツ)=聞き手 前田はるみ=文・構成 尾崎三朗=撮影)
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