減税政策と規制緩和で経済が成長する

とはいえ、多くの人々はトランプをまだよく知らないため、新たなアメリカの指導者が今後、具体的にどんなことを実行していくかに関心があるだろう。

現在、トランプ政権の閣僚が発表されつつあるが、そのメンバーのなかには伝統的な共和党支持者、金本位制・政府支出削減・減税政策を支持する人たちも多く存在しており、非常に健全な人事が行われていると言える。

トランプが選んだメンバーの中には、もともと彼の下で働く必然性がない人も多い。たとえばそれは、過去20年間にトランプのために働いたことがない人たちであり、トランプ個人の特別な友人ではない人たちのことだ。その結果として、トランプは政府を動かすための方法を熟知した有能な人物や、彼のビジョンを共有する人物を内閣に登用することに成功している。それらの人事は、私にも多くのアメリカ市民の目にも非常に現実的なものに見える。

トランプ政権の経済政策は、アメリカにとてつもない経済成長をもたらすことになるだろう。基本方針は「減税政策」と「規制緩和」という極めて明瞭な2本柱だ。

トランプはこれまで、減税政策について共和党の上下両院と非常に近い提案を行ってきた。そのためこれは、両者に共通する政策だと考えていい。今回の選挙によって上下両院のねじれが解消されたことを踏まえれば、減税に関する政策は6カ月以内にスムーズに承認されていくだろう。詳細を見ると、法人税の35%を15%まで引き下げることが明言されており、これは共和党下院の提案の20%よりも低いアグレッシブなものだ。最終的な法人税率は、両者の妥協案として15~20%引き下げられることになるだろう。法人税率の引き下げは、近年低下していた機械・自動車・コンピュータなどへの米国企業の新たな投資の促進に繋がる。また、すでに諸外国が採用している領土制課税(Territorial Tax System)に移行する点も評価に値する。これは、海外は課税対象外で国内のみ、というものだ。

2つめの柱は規制緩和である。それによって、石油・天然ガス・鉱物の採取に関するエネルギー産業は次の4年間でもっとも大きく成長する産業になるだろう。トランプは液化天然ガス・鉱物資源・新たなパイプライン建設等の許可プロセスの加速化を呼びかけている。これは、連邦政府が所有している土地における石油生産総量が減少しているのに対し、州政府が保有する土地や私有地では、新技術のおかげで地中深くにある石油や天然ガスを抽出することが可能になり、生産量が急激に増加しているからだ。仮にトランプが連邦政府の所有地におけるさらなる天然ガス事業の発展を許可した場合、アメリカのエネルギー生産は急激に増加するだろう。

トランプが断行する規制緩和はエネルギー分野だけに留まらない。それらは医療や金融制度なども含む広範囲なものになると思われる。トランプは、オバマケアによって増加・範囲拡大した連邦政府によるビジネスへの干渉、特にヘルスケア分野での政府干渉をなくしていくと述べている。ヘルスケアエコノミーにおける連邦政府の干渉の急激な減少により、アメリカ食品医薬品局における認可手続きなどのスピードアップが実行される。

また、オバマ政権は銀行業に多大かつまったく役に立たない規制を設けることで、長く不要なダメージを与えてきた。クリス・ドッド上院議員とバーニー・フランク下院議員によるドッド・フランク法が可決される前の段階に立ち戻ることで、資本が自由に動きやすい環境を再構築することになるだろう。