確定拠出年金やNISAを活用して老後の備えを

そもそも、なぜ退職金というものが存在するのでしょうか?

戦後急速に広まった退職金制度ですが、法律によって企業に義務付けされているわけではありません。社員の退職後の生活保障という側面が強いものの、企業にとっても導入するメリットがあったのです。それは、「一度入社した社員は途中退職することなく、できる限り定年まで勤めて欲しい」。そのため、定年まで勤めあげれば高額に、途中で退職すると減額されるしくみになっていました。

国もそれを推奨するため、企業側と社員側双方に対して、税制優遇などで後押ししてきました。今でも、一定額までの退職金に対しては所得税がかからないことになっています。要するに、毎年給与として受け取るよりも、退職金として受け取った方がトクというわけです。

ところが、時代は変わりました。

大企業でも転職が当たり前の世の中になり、会社にとっても「できる限り定年まで勤めあげて欲しい」というニーズは薄れてきました。それに加えて、資金積み立てのために活用していた各種の企業年金制度は、バブル崩壊後運用難が続いたため、会社の財務を圧迫するようになりました。企業に認められていた「退職給付引当金」という税制優遇措置も廃止されています。退職金は、コストが高いわりに、存続させるメリットも少ないしくみになってしまったのです。

しかしながら、社員にとっては死活問題です。

それでなくても、厚生年金の支給開始年齢は、60歳から65歳まで段階を追って引き上がっていきます。その間、60歳定年後に再雇用されたとしても、賃金水準は大幅に下がるのが一般的です。このような状況下で、退職金までアテにできない時代が訪れているのです。

やはり、自分自身で備えなければなりません。

2014年からNISA(少額投資非課税制度)が始まり、今年からは個人型DC(個人型確定拠出年金)の加入範囲が拡大され公務員や専業主婦まで加入できることになりました。会社によっては、企業型確定拠出年金に各人が掛け金を上乗せできるしくみを採り入れているところもあります。これらは、個人の投資や老後の備えを税金面で優遇する制度です。

「なるようになるさ」と投げやりな考えは捨て、できるだけ早い段階から、将来準備することをお勧めしたいと思います。

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