イギリスのEU離脱宣言、トランプ氏の大統領選勝利など、世界市場に衝撃を与える出来事が続いた2016年。そして、2017年のマネーはどんな動きをするのか。世界的投資家のジム・ロジャーズ氏に聞いた。

トランプ相場はどこまで続く?

――2016年11月の米国大統領選でトランプ氏の優勢が伝えられると、世界の株価は急落しましたが、その後大幅に反転し、高値が続いています。

市場の反応は、トランプ氏が唱える減税とインフラ投資に対する期待の表れですが、この高揚感が長期的に続くことはないでしょう。米国には間違いなく減税が必要ですし、過去7年ほど衰退し続けて今やすっかりお粗末になってしまったインフラも再構築されるべきなので、本当に実行できるのであれば素晴らしい。しかし、財源はどこにあるのでしょうか? 米国はすでに世界最大の債務国です。

ジム・ロジャーズ氏

世界各地で問題が顕在化しているとき、人々は安全な場所を求めて米ドルを保有したがるという傾向があります。世界のマネーが米国に集まってくれば、米国は資金を調達しやすくなるので短期的には問題を先送りできる。しかし、結局は借金を増やすことと同じなので問題は悪化するでしょう。

ただし、米企業が国外で保有する約3兆ドルを国内に還流させるつもりだと、トランプ氏は言っています。もしこれが実現すれば、「トランプ相場」はさらに上昇し、その状態がしばらく続くと思われるので、この点に市場の期待が集まっています。

こうした国外の米国マネーは長年にわたって蓄積されたものです。これまで米国の税法では、企業が海外で稼いで得た資産に対して、ほとんど課税してこなかったからです。かつてジョージ・W・ブッシュ大統領の時代に、企業が国外に置く資金を国内へ移動させる際に支払う税金を1年間引き下げるという施策を講じ、国外の米国マネーが多少は戻ってきたのですが、さほど大きな流れにはなりませんでした。企業がこぞって多くの資金を移動させるのに十分な減税ではなかったのです。

トランプ氏は、企業に資金の還流を促すための策を持っていると、自信をのぞかせています。もし本当に大規模なマネーの還流が実現すれば、米国にとって好ましい状態がより長く続くことになるでしょう。ただし、資金の還流がひととおり落ち着いてしまえば、次は貿易戦争を始めると思いますよ。そうなれば、やはり「トランプ相場」は終わりを迎えます。