言葉選びの難しさ

もうひとつ気になる表現は、「空いたお皿をお下げしてもよろしいでしょうか?」というものです。すでに食べ終わって空になっている皿を下げる際に、この言葉を発する店員さんは多くいます。もちろん、まだ料理が残っているとか、あるいは皿についたソースをパンですくって食べるかもしれないとか、店側にとって判断に迷うときに尋ねる分にはまったく問題ありません。

しかし空っぽの皿で、どう考えてもそれは下げるべきだろうという状況においても、こうした問いを投げかけられることは、かなり多いものです。無用なトラブルを回避するために設定されたマニュアルなのか、あるいは当人が何も考えずに機械的に聞いているだけなのかはわかりません。ただし、少しでも観察していれば下げてよいかどうかはわかるはずで、そんなときには「空いたお皿はお下げしますね」と言えば良いだけなのです。

「少々お待ちください」や「お下げしてもよろしいでしょうか」を気にする私は、冒頭の敬語の誤りを指摘する人たちと大差がないことは自覚しています。けれども、同じ意味を伝えるにしても、その言い方やそれがどんなシーンなのかによってニュアンスが大きく変わってしまうのが接客の難しさです。正解がないからこそ、店側としては「自分たちはどのような言葉を選ぶべきか」には、もう少し自覚的であっても良いように思います。