Android PayスタートはVISAの逆襲か?

しかし、その戦いは単純なものではありません。古い盟主といってもVISAは、この20年間指をくわえて業界の動きを見ていたわけではありません。実際のところVISAはいろいろな手を打ってきました。クレジットカードの既存のインフラを使ってデビットカードやプリペイドカードのサービスをスタートしたのをはじめ、新分野を開拓しキャッシュレス化を進め、収益を上げてきました。

また、スマホ時代に合わせて、非接触IC決済のペイウエーブを開発し、アップルペイやアンドロイドペイで対応できるようにしています。ペイウエーブは日本以外では優勢な決済ツールとして普及しつつあります。ですから決して盟主が交代しつつあるとはいえない状況ですし、VISAも十分にがんばっているのです。しかし、それでも盟主の交代は近々避けられないと私は見ています。

それはすべてを集約するスマホが圧倒的な存在感をもっているからです。とくに日本ではアップル製品がスマホの半分以上を占め、アップル天国といってもいい状況が生まれています。また、日本でもっとも有力で、広範囲に使われている電子マネーのスイカと合流したことで、アップル+スイカ連合はますます強大になりました。そう考えると、世界ではわかりませんが、日本ではアップル+スイカ連合主導で、盟主交代が進むという予感がします。

こういう展開のなかで、12月にアンドロイドペイのサービスがスタートしました。アップルのライバルのグーグルとVISAが手を組んだのです。両者が提携した背景を考えると、独自に手数料を取ろうとするアップルに対するVISAの警戒感があると考えられます。一方のグーグルは、アンドロイドペイに参加したいカード会社からは手数料を取りません。つまり、VISAやマスターカードの国際ブランドの領分は侵さないと約束しているから手を組みやすいのです。

すでに述べたように、VISAは、この日に備えて、さまざまな努力を重ねてきました。なかでも、スマホ時代におけるVISAの基本姿勢は一貫しています。クレジットカードは非接触ICタイプA、タイプBを使う対応です。そのためVISAは東京オリンピック開催の2020年までには全国の店舗でタイプA、Bに対応する端末を設置して海外からの観光客が買い物のできる環境を作ろうとしています。日本以外のスマホに入っている決済ツールはタイプA、Bが主流ですから、それに対応させようとしているのです。