中央区の子供の3割は、視力0.3未満

私も東京暮らしが長くなりましたが、夜の電車で、分厚い参考書を食い入るようにして眺めている小学生をよく見かけます。中学受験をするため、塾通いをしているお子さんでしょう。

目が悪くなりはしないかと心配になりますが、統計でみるとこれが当たってしまっている。中学受験が浸透している地域では、目が悪い子どもが多いのです。図3は、国・私立中学進学率と小学校6年生の近視率の相関図です。近視率とは、裸眼視力が0.3未満の児童の割合を意味します。

2つの指標の間には、+0.8343もの相関関係があります。中央区では、3割近くが視力0.3未満なのですね。眼鏡をかけている児童も、さぞ多いことでしょう。食生活の乱れ(夕食をいつもファストフードなどで済ます)や運動不足による、肥満の増加も懸念されます。早期受験をさせるご家庭では、お子さんの健康に気を配っていただきたいと思います。頭が訓練されても、「カラダ」が蝕まれては何にもなりません。

私は子どもの頃、塾通いは一切しませんでした。朝から夕方まで教室で座学してヘトヘトなのに、それをさらに夜遅くまでやらされるなど「真っ平ごめん」と考えていました。仮に週4日や5日も塾通いさせると言われたら、「虐待だ!」と児童相談所に駆け込んでいたと思います。

「虐待」という穏やかでない言葉が出ましたが、この言葉の原義をご存じでしょうか。虐待を英語でいうと「abuse」ですが、この単語を分解すると、「ab(異常に)+use(使う)」です。すなわち、虐待の元々の意味は「乱用」ということになります。

昔は、この意味合いで「児童虐待」という言葉が使われていました。戦前期の新聞をみると、児童を長時間工場で働かせる、過重の宿題を課す、父母の虚栄心を満たすため女児に遊芸を無理矢理仕込む、といった行いが「児童虐待」として告発されています。まぎれもなく、「abuse」です。

子どもが長時間工場で働かされるような「abuse」は無くなりましたが、現在では別の意味の「abuse」が出てきていることに注意が要ります。親の虚栄心(見栄)のため、子どもに早期受験を強制するなどは、その最たるもの。

児童虐待が社会問題化していますが、殴る・蹴るといった身体への侵害だけでなく、本来の意味の「乱用」にも行政は目を光らせるべきかと思います。われわれは今、この言葉の原義に立ち返ることを強く迫られているといえるでしょう。

(図版=舞田敏彦)
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