イリノイ州モスヴィルにあるキャタピラーのエンジン・センターでは、「似たもの好き」を防ぐために、より本格的なプロセスを導入している。社内の効率化に関するコンサルタントであるパトリック・オブライエンが、昇進候補となっている社員や採用候補者について、スキル、資格、素質に基づいて、客観的な評価を収集する。そして有力な候補者が見つかれば、オブライエンが導入した評価ツールで、人事マネジャーが自分の情報処理のスタイルと採用候補者、あるいはチーム全体のスタイルとを比較して、一致点や相違点をはっきりさせる。

このような二者間、あるいはチームの分析は、仕事のやり方の異なる社員同士の間で生じうる問題を軽減することに役立っている。

「仕事に必要なことができる有能な人材を採用したからといって、その人物がチームにもたらすものをマネジャーが評価するとは限らない」とオブライエンは言う。

「マネジャーによっては、これは難しいことであり、そうしたマネジャーには、人物よりもプロジェクトの成功こそが重要であることを指摘する必要がある。成功したいのであれば、リーダーは自分とは大きく異なる人に関しては、異なる雇用の仕方をしなければならないことを理解する必要がある」

自分のグループを創造的な集団にしたいのであれば、リーダーは、意見の相違を黙認していてはだめで、むしろ奨励しなければならない、とドロシー・レオナルドとウォルター・スワップは『When Sparks Fly』に書いている。そうしなければ、「物事が(あるいは人が)通常どのように機能するのかといった予想」にいつまでも縛られたままとなろう。「問題に対し『当たり前の』方向からしかアプローチできないという泥沼に陥る」ことになる。そして、すでに持っている見解を確認する証拠だけに注目しがちになる。

したがって、新しいメンバーを加えるときの課題は、グループにできる限り知的多様性をもたらしながら、結果として生じるさまざまな視点やアプローチの衝突が、人間関係の不和を増大するのではなくて、営業成績の向上に働くように図ることである。それを果たすひとつの手だては、前もって上司と部下の関係を定義しておくことだ。

最終選考に残った人に話をするときには、自分が好む仕事のスタイル、そして部下に対して望む行動、望まない行動を明確にすることだ、とインシアードの研究者ジャン=フランソワ・マンゾーニとジャン=ルイ・バルソーは新著『The Set-Up-to-Fail Syndrome』で忠告している。入社当初からの率直なコミュニケーションは、上司が部下を要注意人物として見始めたときに始まる悪循環を回避するのに役立つ。

部下の業績が標準以下ではないかと心配する上司は、その社員を入念に観察するようになる。するとその社員は、部署内で疎外感を覚え始める。上司の期待が弱まったと感じた社員は、自信が揺らぎ、モチベーションが下がって、パフォーマンスも落ちる。上司はそれを、その社員が実際に有能ではなかったことを裏付けるものと解釈する。このように誤解と期待以下の働きが相まって、悪循環を生むのだ。