石川県で米の請負耕作からスタートした六星。米を使った餅や弁当、惣菜の加工、販売にも事業を広げるとともに、ターゲットごとのブランド戦略で顧客層を広げてきた。その結果、「昔ながらのお餅」が好評だった六星の店には、おしゃれな和菓子を求めて若い女性も訪れるようになった。軽部英俊社長にブランド展開の狙い、生産現場での課題、事業展開の考え方について聞いた。

シンプルに「おいしいもの」を売る

――お米やお餅を中心に、お弁当、お惣菜、和菓子などさまざまな商品を展開しています。どのような基準で商品やカテゴリーを広げているのか教えてください。
軽部英俊(かるべ・ひでとし)●株式会社六星代表取締役社長。1967年、東京都町田市生まれ。中央大学法学部を卒業後、トーヨーサッシ(現トステム)に入社。主に営業担当として約7年勤務した後の97年、家族とともに石川県へ移住するとともに有限会社六星生産組合へ入社して就農。前職での経験を生かし、経営の近代化や農産物の販路拡大に奔走する。2007年、株式会社六星への移行のタイミングより現職。
六星>> http://www.rokusei.net/

【軽部】私たちの商品は、自社栽培した米や野菜を使うことが大前提です。また、すべての商品で打ち出しているわけではありませんが、添加物を使わないことで、お客さまに信頼していただける商品を目指しています。あとはシンプルに、おいしいものしか売りません。「一般のお惣菜や店屋物と比べると値段はちょっと高いけれど、味は絶対に外さないよね」。そう言ってもらえるおいしさは、絶対に守りたいと思っています。

――自社栽培においては、農家から農地を借りて生産する請負耕作が中心で、地域で農業をやめていく人たちの受け皿としても機能しています。生産における課題にはどのようなことがありますか。

【軽部】耕作者の権利がなかなか守られないという問題があります。地主さんとは大抵複数年の契約を結びますが、契約途中でも地主さんの都合で土地を売ることになれば、私たちは土地を返さなければなりません。すでに機械や肥料などの設備投資をしているうえに、急に契約を反故にされて計画どおりの生産ができなくなるのは、まさに死活問題です。このことは引き続き主張していきたい。

この辺りはもともと米づくりが盛んな地域でしたが、最近は金沢市のベッドタウンとしての宅地化が進んでいます。行政は私たちに期待していると言いながら、一方で宅地造成や商業施設建設の許可を出して土地開発を進めています。耕作者の権利が守られるかどうかは、農業の産業化にも大きく影響を与えます。本来の計画どおりに物事を進めてほしいと強く思います。