基幹車種に成長したCX-5の今後

マツダは来年以降、スカイアクティブ技術の進化系であるスカイアクティブの第二世代を製品に取り込む計画だ。新型CX-5にも遅かれ早かれその新しい心臓を積むことになるだろう。新しい心臓を与えられたCX-5が成功するためには、4年前にスカイアクティブ技術が初めて登場したときの新奇性には及ばなくても、それに近い「驚き」を市場に与えることが求められる。ここしばらくの間は、色やデザインの新奇性で消費者を惹きつけても、マツダの標榜する“人馬一体”というクルマのパフォーマンスにこれまで以上に磨きをかけなければ、その効果は限定的なものに終わってしまう可能性もある。同時に、今まで以上にガソリンエンジンの進化にも取り組まなければ、スカイアクティブに対する評価の維持はできなくなる。

2012年2月、初代CX-5の発表会の壇上で当時の社長山内氏は「CX-5で市場を創造する」と言い切った。メーカーのトップとしては実に思い切った発言だった。これをきっかけにそれまで年間販売台数わずか8800台の国内ディーゼル乗用車市場が、その4年後の昨年には15万3732台にまで拡大している。なんと4年間で17倍以上という成長ぶりだ。そして繰り返すがマツダのディーゼル乗用車がそのうちの3分の2と圧倒的な地位を占めている。山内氏が言ったように、マツダは新たな市場を創造した。

今回の新型CX-5は、この山内氏の有言実行がなければ、つまり初代の成功がなければ、誕生しなかったかもしれない。その観点から、今、改めて優れた経営者として山内氏を評価し、その功績を確認すべきだろう。自分たちが育てている国内のディーゼル乗用車市場においてCX-5の存在をさらに高めることが、つまり成功をおさめることが、マツダ・ブランドの評価につながっていくはずだ。

現在、同社の基幹車種にまで成長したCX-5は、市場の創造という観点から、新しい挑戦に挑むという。今回のモデルチェンジを機にディーゼルエンジン仕様の製品を北米市場に投入する。一昨年ドイツのフォルクスワーゲンが排気ガス規制のルール違反をして物議を醸した市場に、マツダはあえてその真価を問う。そのためマツダは現行の2.2リッターよりも排気量の大きなディーゼルエンジンを追加するかもしれない。こうした動きが成功すれば、同社が従来から改善に取り組んできている北米市場での同社のビジネスに、弾みがつくだろう。この意味でも、ディーゼルエンジン仕様車の展開と進化は、CX-5成功のカギを握っている。

スカイアクティブの第二世代の導入に道を開く、そしてマツダのエンジニアリングが市場でさらに存在感を増し、ブランド構築につなげるという意味で、CX-5が担う役割は非常に大きい、と言える。

(宮本喜一写真)
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