出向、そしてOne JAPAN立ち上げ

【田原】さて、濱松さんは2016年にパスというベンチャーに出向になる。これも自分で希望されたんですか。

【濱松】いや、私の会社人生の中で初めて会社から指示された異動でした。

【田原】One Panasonicをやるならパナソニックにいたほうがいいでしょう。外に出されたということは、やめろってことですか(笑)。

【濱松】いえいえ、違います(笑)パナソニックから資本関係のないベンチャー企業への出向は、初めてのケース。人材も自前主義をやめて外部の力も活用して育てようということで、選抜いただきました。選抜といっても、初めてのケースなので、モルモットで行ってこいという感じです。

【田原】パスはどういう会社なんですか。

【濱松】化粧品の企画・販売や旅行事業、人材・組織開発コンサルティング事業など、多角的にやっています。私は人材・組織コンサルティング事業で、「越境型人材」の開発や越境型人材を活かすコミュニティづくりのコンサルティングの立ち上げをしています。

【田原】出向とOne JAPANの立ち上げはどちらか先ですか。

【濱松】出向です。もともと5年ほど前にOne Panasonicを立ち上げてから、いろいろな企業の有志団体と交流を持っていました。自分の会社でも新しく立ち上げたいという人からも声がかかって、週末になると夜行バスで東京にきてブレゼンしていました。団体がある程度増えてくると、会社の枠を超えて大企業という広い枠で団体をつくれば、もっと社会を巻き込んだ活動ができるんじゃないかという話が出ていました。ちょうどそのころ私の出向が決まって、東京に赴任することに。やるなら東京にいるうちにやろうと思って、One JAPANを立ち上げました。

「二足のわらじ」のロールモデルになりたい

【田原】たくさんの企業をまとめるとなると、濱松さんはパナソニックを辞めて、事務局としてやっていくのが普通だと思う。どうして会社を辞めないんですか。

【濱松】2つ理由があります。まず1つは、私がまだパナソニックで明確な成果を出していないから。One PanasonicやOne JAPANは業務外の活動。「濱松はパナソニックで何したんや?」と言われたら、自信を持って言えることはないんです。それが私の中である種のコンプレックスになっているので、とにかく何か圧倒的な成果を出したい。これはもう意地ですね(笑)あともう1つは、「ロールモデル」になりたいなと。

【田原】ロールモデル?

【濱松】これからの働き方として、二足のわらじ、三足のわらじをあたりまえにしたいのです。One JAPANは4月から一般社団法人化を予定しています。また、そのうち自分で起業もしたい。パナソニックで働きながらそれらのことができたら、人生が充実する。大企業やベンチャーのどちらかなど関係なく、やりたいことをやる。私よりさらに若い世代の人たちに、ぜひその姿を見せたいです。

【田原】わかりました。頑張ってください。

濱松さんから田原さんへの質問

Q.トランプ大統領で、世界はどうなる?

【田原】パナソニックのような大企業は、これまでグローバリズムで利潤をあげてきました。ヒト・モノ・カネが国境を超えて世界で容易に展開できるのがグローバリズム。好むと好まざると、企業はその土俵で戦わざるをえませんでした。

しかし、アメリカ国民はグローバリズムの矛盾に苦しんで、グローバリズムを否定したトランプを大統領にした。この流れはアメリカだけじゃない。イギリスのEU離脱も反グローバリズムの表れです。

ただ、僕は世界がこのまま反グローバリズムになるとは思っていません。長い目で見ると、国境に壁をつくることはマイナスに働きます。企業もグローバリズムを否定したら立ち行かない。事態はまだ流動的でしょう。

田原総一朗の遺言:長い目で流れを見極めろ!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、メドレー代表・豊田剛一郎氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、1月7日発売の『PRESIDENT1.30号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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