名曲を楽しむように気になる部分を読む

こうした本の読み方は、音楽の楽しみ方に似ています。ヘッドホンで一所懸命に曲を聞いたところで、曲の構成をすべて記憶することは難しいと思います。他方で、BGMのように聞き流している曲でもフレーズが頭から離れないということがあります。読書でも同じように、最初から最後まで読み切ろうとせず、1%でも印象的なフレーズが頭に残ればいいのです。

ヒップホップや電子音楽といったジャンルでは、過去の音源から抽出した音の断片を組み合わせて新たな楽曲を制作する「サンプリング」という手法を用います。要は既存曲の一部を「引用」して再構築するわけですが、1枚のレコードからサンプリングできたのがほんの数秒だったとしても、その数秒は大変な価値をもちます。

私は本を読むときに、こうしたサンプリングのつもりで、気になった箇所をどんどん書き写します。読了時に残った引用のリストは「その本を読書することによって自分が吸って、吐いたすべて」です。これを読み返すだけで、すぐにレビューも書けます。それだけ深い読書効果が得られるのです。

音楽を楽しむように、気に入ったところだけ読む。ぜひ試してみていただければと思います。

▼読書スピードを高める4ステップ

ステップ(1)「はじめに・目次」をよく読む
⇒機能性に優れた本ほど、優れた「目次」が書かれている

ステップ(2)最初と最後の5行だけ読む
⇒ユニットの重要度は「序盤」と「終盤」を読めば大体わかる

ステップ(3)キーワードを決めて読む
⇒本を開く目的が明確になり、流し読みもやりやすい

ステップ(4)2つ以上の読書リズムで読む
⇒「じっくり読む」と「流し読み」など意識的に緩急をつける

▼「速読」には本の選び方が重要
・そもそも読まなくていい本⇒×
・速く読む必要がない本(小説、翻訳書など)⇒1割
・速く読める本(ビジネス書、新書など)⇒9割

印南敦史
書評家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年、東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
 
(須藤 輝=構成 早川智哉=撮影)
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