2017年1月13日(金)

中華の神髄「くらげときくらげ」……地味とか言ってごめんなさい!

dancyu 2015年5月号

文・西澤千央 撮影・kuma*

「脇役」にこそ中華の真髄が宿るっ!

●クラゲの冷菜/銀座「家全七福酒家」のクラゲの冷菜、お値段なんと2300円! 高級中華食材御三家の一端を垣間見る一皿である。●きくらげ麺/日本一きくらげを消費しているとウワサの杉並の名店「蓬莱軒」の人気ナンバーワンのきくらげ麺830円。

「くらげときくらげ」、中華料理において、それは実に地味な存在だ。前菜の盛り合わせになんとなくいる、くらげ。そもそもキノコなのに“○○タケ”と名乗ることもできない、きくらげ。海のものとも山のものともわからない、未確認中華食材ではないか。

しかし、そんなわれわれが抱くイメージに強く異を唱える人々もいる。

「かつてくらげはフカヒレ、干しアワビとともに“高級中華食材御三家”と呼ばれていたんですっ!」

「きくらげなんて大昔は不老長寿の妙薬として珍重されていたほどっ!」

そう訴えるのは「くらげ普及協会」の福田金男氏や食材卸「耀盛號」の関口洋平氏などくらげ、きくらげ派の面々。

双方の話を聞くうちに、この2つの食材の奥深さが見えてきた。まずは食材としての役割だ。実はくらげもきくらげも無味無臭。「求められているのは食感です」と関口氏は言う。シンプルにも程がある役割だが、もともと完全分業が基本の中華料理。だからこそ“歯ごたえのスペシャリスト”があって然るべき。自分の職務が明確なのは何だか潔くてカッコイイ。

それでも、食卓に上るまでに手間はかかる。関口氏曰く「きくらげは水分を抜くのに3日以上かかります。劣化が早く、広大な中国大陸に流通させるには干して日持ちを良くする必要があったんですね」。一方のくらげ。もちろん生では食べようと思わないが(福田氏曰く「胃が痙攣する」らしい。ヒィィ)、加工して食べるまでの道のりが実に長いのだ。まずみょうばん水に浸ける。その後水を抜き、弾力を出すため塩みょうばんに漬けること3回。日数にして3カ月。さらに使う前にお湯で戻すのに2日……って、ぷりぷり食感に至るまでの、長編ドキュメンタリーか!

これだけ複雑な工程が現在までも受け継がれていること自体、くらげときくらげがいかに先人たちに愛されてきたかを物語っているだろう。

そして最後は「薬膳的効能」である。役割は食感のみ、途方もない手間もかかる。でも食べたい、いや食べねば! この感覚は“医食同源”の中華ならでは。「くらげは春、きくらげは冬、その時季に陥りがちな体調不良をカバーすると言われていますよ」と南青山の薬膳中華「エッセンス」のオーナーシェフ、薮崎友宏氏は話す。

完全分業、手間暇、そして薬膳……それはまさに中華の真髄そのものではないか。海のもので、山のもので、中華料理のアイコン。地味とか言ってごめんなさい! くらげときくらげ知らずして中華を語るべからず!!

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西澤 千央