「長所で尊敬され短所で愛される」上司を目指せ

上司には、そこまで強いイメージはない代わりに、個々の人格がくっきり浮き出る。いい上司、嫌な上司という物の言い方は多分に感情的なもので、仕事の能力以外の人格が含まれている。極端に言えば、いい上司とは仕事のできる人でなくてもいいのだ。あなたの近くにいる評判のいい上司を思い浮かべてみよう。ずば抜けて仕事ができる人ではないのではないか。

部下から見て、上司が自分より仕事ができるのは当たり前である。人脈が広いのも同様だ。つまりスキルの高さや人脈の豊富さはキャラの強さにあまり影響しないと考えられる。

では、次のような個性はどうか。

熱血漢である、すごく思いやりがある、面倒見がやたらと良い……。仕事はそこそこでも、それ以外に魅力があり、周囲の信頼を勝ち得ている人が出世しているのではないだろうか。だとしたら、それこそがいい上司と慕われるためのキャラなのだ。

最強なのは“憎めない”上司。忘れっぽい。遅刻をする。服装がだらしない。口が悪い。PCすらまともに操れない。でも憎まれず、部下に慕われている。こうなったら、中間管理職としては無敵である。

だが勘違いしてほしくない。キャラが濃ければ濃いほど、演じる者は疲労するのだ。仕事を円滑に回すため、自分の成績を上げるため、部下を持つ身になったビジネスマンはいい上司になろうと張り切る。自分が部下だった頃、こんな上司がいたらと考えていた理想を実現したくなり、身の丈に合わないキャラを演じて失敗する。あるいは逆に、四方八方に気を使うあまり萎縮し、自分らしさを発揮できなくなってしまう。

無理は禁物、長続きしない。

いい上司になりたければ、ありのままの自分を武器にするしかないのである。ただし、本当に素のままでいいのはごく少数の人だけ。武器を磨く必要がある。

人は長所で尊敬され短所で愛される、ということばがあるが、ここでのキモは長所である。尊敬されるところがあるから短所が愛嬌に変わるのだ。仕事の能力と人脈以外であなたの長所はなんだろうか。胸に手を当て、願望抜きで考えてみよう。

リーダーシップ、包容力、粘り強さ、明るさ、気遣い、時間に正確、正直さ、決断力……、嫌なことをすぐ忘れるのが特技とかでもいい。自信を持って、これが自分の良いところだと言えるものをひとつ選び、前面に押し出すのだ。

押し出すからには凡庸なレベルであってはならないが、備わっているものの中から選んだものなのだから、今以上のレベルに高めることは困難ではないはずだ。