時代を先読みしたイノベーションが起こる

2015年あたりからグローバル案件の依頼も落ち着いています。かつては、インドやベトナム、東南アジア諸国など新興国への事業進出に伴う現地法人への駐在員の派遣、あるいは、そうした国々での戦略立案をサポートしていく本社機能を構築するための、グローバル部門人材の採用依頼がそれなりにありました。

こうしたグローバル人材に関しても、ポジション的には実務レベルにシフトしています。理由として考えられるのは、現地での経営戦略が固まり、それをオペレーション段階でいかに運用していくか、攻めていくかというフェーズに移行しているのだと思います。そのため、運用に属性を持つポジションが目立ってきたといえます。

「女性の輝く社会」を訴える安倍政権の誕生以降に増えていた女性管理職案件にも、変化が見え始めています。15年度までは女性管理職の登用に力を入れる企業は多かったのですが、現在は減速傾向にあります。一時的な現象でなければいいのですが、心配な部分でもあります。

一方、海外企業が人材を求める動きは一時に比べると減少傾向にありますが、まだそれなりにあります。具体的には、日本企業に勤める人材を採用したいという外資系、特に韓国や中国とアジア系の企業です。しかし、現実には人は動きません。先日、電機大手の幹部にお会いしたら「また誘いが来たよ」と話してくれました。以前は、かなり強引だったのが、現在では打診程度で半分は諦めモードだといいます。

そこで、来年の見通しですが、状況が変化し変革期に突入すると考えています。世界的には、イギリスのEU離脱や米国のトランプ大統領就任のように誰もが予測しにくかったことが起きました。国内も高齢化社会への対応のためパラダイムシフト級の動きがあると思えるような業界もあります。実は、我々の業界は世の中が安定していると動きとしては少なく、変革期のほうが求人相談や依頼が多くなる傾向があります。

その意味で、経営者のマインドも「何かが変わりそうだ」という変革モードにギアシフトするのではないでしょうか。その際、時代を先読みしたイノベーションが求められますが、それ自体はトップの役目。今後はそのイノベーションを実現させるべく、既存事業への影響力を維持しつつも海外展開、新規事業や先端技術開発のための人材獲得にも目が向くはずです。私どもの業界からするとチャンスだと思っています。

武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン社長
1968生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て約18年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数の トップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かすよう心がけている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、驚異的なペースで飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務、08年1月社長、17年1月会長、半蔵門パートナーズ社長を兼任。
(取材・構成=岡村繁雄)
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