「電話がかかってきたとき『もう休みました』って言うの恥ずかしいから、夜10時前には寝ないで」。電子メールが普及する前は妻によく注意されていた。

私は極端な朝型人間で夜は全く使いものにならない。本書では、自分の生活習慣が基本的に理にかなっていることが確認できて嬉しい。

環境の変動に対応するためには、身体の状態を同様のリズムで変動させるほうが生存にとって有利である。多くの生物が身に付けた24時間周期の身体変動のリズムを「サーカディアンリズム(概日周期)」と呼ぶそうだ。

24時間の周期性は、精神活動にも影響する。論理的判断を必要とする課題に取り組む場合は、午前10時から午後2時頃が効率がいい。逆に記憶や計算に関わる仕事の場合、夕方から夜8時頃が適している。深夜の作業は非効率。まあ、それはそうだろうなあ。逆に、早朝の原稿書きは自分では冴えている気持ちになるけど、必ずしもベストではないらしい。

「感じられる時間」の長さがさまざまな要因で決まるメカニズムも興味深い。たとえば、その間に体験した出来事が多いほど時間は長く感じるし、明るい空間で過ごすほうが暗い空間で過ごすより長く感じやすい。また、時間経過に注意を払う回数が多いほど時間を長く感じるという。これなど退屈な会議中に体感する人も多いだろう。

本書の知見はマネジメントの視点からも役立つ。人間は与えられた時間を目いっぱい使う傾向があるため、締め切りまで余裕があるとピッチが上がらず非効率になりやすい。これは「パーキンソンの第一法則」と呼ばれる。目標が近づくにつれてモチベーションが上がる「目標勾配」の特性と合わせて考えると、部下に仕事を与えたり、同僚に頼みごとをしたりするときの期日設定の参考になりそうだ。

時間どおり、予定どおりに物事が進まないのは世の中の常。その一つの要因は「注意捕捉」(何か気になることがあるとそちらに注意がいってしまう傾向)だという。

では、気が散らないようにするにはどうしたらいいか。環境が許すなら、突然の来客や電話に仕事を中断されないように個室で作業するのもいいだろう。著者はネット環境からの随時隔絶も推奨していて、これはイタダキだ。今後は学生に「大事なことに集中したいならまずスマホの電源を切れ」と言おう。

若い頃は、結構ダラダラと日々を過ごしてきた。しかし、50歳を過ぎ、自分の時間の使い方は変わってきたと思う。1日24時間、貴重な資源を大切に使いたい。この気持ちの変化は、人生の締め切りを多少なりとも意識し始めたことと無縁ではないだろう。これって、広い意味での「パーキンソンの第一法則」なのかもしれない。