2017年1月6日(金)

麺のルーツがついに決着!? 「中国料理」の歴史をたどる

dancyu 2015年5月号

文・漆原直行 中国料理について教えてくれた人:作家、翻訳家・南條竹則さん、中国食文化研究家・木村春子さん、音楽評論家、料理研究家・小倉エージさん

▼中国料理について教えてくれた人
南條竹則さん●作家、翻訳家。中国料理と酒、中国文学を愛する。近著に『中華料理秘話 泥鰌地獄と龍虎鳳』(ちくま文庫)がある。
木村春子さん●中国食文化研究家。中国の本格料理から家庭料理まで歴史と風土を研究。共著に『中国食文化事典』(角川書店)。
小倉エージさん●音楽評論家、料理研究家。特に香港の食文化に造詣が深く、食事情・文化・大衆音楽の評論活動を続けている。

1. 強火で「ジャーッ」は意外と最近!?

「火を制するものは中華を制する」てな格言!? もあるように、中国料理といえば大火力を用いて中華鍋を豪快に振り、具材を宙に跳ばしながら高温で炒めるド派手厨房のイメージが強い。

しかし、木村さん曰く「そうした調理法の端緒が見られるのは古くても明(1368~1644年)の時代。技術が確立して、広まったのは清(1661~1912年)になってから」とのこと。あれあれ? 意外と最近なんじゃないの!?

現代の中国料理のルーツと呼べるような料理が数多く出現したのは宋(960~1279年)の時代で、炒め料理もあることはあった。ただ、軽くて高熱にも耐える鉄鍋や、強火を生み出す燃料(コークス)が使える調理台などが揃わないと、高温でジャーッと炒める料理は無理。初期の炒め料理は、静かに具を混ぜながら油を含ませて加熱するようなものだったようだ。「宋代は竈の上に固定された鍋(というか、釜に近い)が主だったのですが、元代(1271~1368年)になると手で持ち上げられる鍋が登場。傾けたり、振って具を混ぜたりできるようになりました」と木村さんは言う。

加えて、調理に使う油も、古くはラードなど動物性が主体。大豆や胡麻といった植物油は抽出に大量の原料と手間を要するので、皇帝や高級官僚など一部の人たち以外には、なかなか使えない代物だったらしい。甚だ不公平なからんや!!

2. 「麺のルーツ」論争ついに決着!

中国4000年の歴史――よく使われる表現だが、木村さん曰く「少なくとも料理については、4000年前に現代のようなメニューは成立していない」とか。ちなみに中国では「5000年の歴史」ともいわれているそう。南條さん曰く「紀元前を2000年も遡るとなると、夏王朝(紀元前2070年頃~同1600年頃)の話になる。さらに1000年遡るともはや神話の世界。まあ『白髪三千丈(意訳:長年の憂いのせいで白髪が伸びまくり、全長9kmになっちまったよ)』なんて表現をするくらいで、中国の人は大げさな話が好きですから」と苦笑。そもそも“中華”という言葉も「中国が宇宙の中心」なんて思想から来ているわけで、軽く話を盛りがちな一面はあるのかも。

……な~んて思っていたら、中国でなんと4000年前の麺が発見されたとか。2005年10月、中国北東部の黄河流域にある喇家(らつか)遺跡から、お碗の底に残っていた麺が出土。分析の結果、粟やきびでつくられた麺と判明。麺の発明については中国人のほか、イタリア人とアラブ人もかねてより「ウチがルーツ!」と主張してきたが、この発見によって、ひとまず中国の勝利ということに。4000年も前から麺を啜り続けていたとは、中国人の麺ラブ、恐るべし。

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漆原 直行