新しい企画は「絞り込み」から生まれる

――C Channelが描いているヴィジョンを聞かせてください。

【森川】おそらくどんどんメディアがデジタル化するというのがひとつ。でも、今までのメディアを単純にデジタル化するだけでは足りないんですよね。よく映画をネットで流すとかテレビをネットで流すというのがありますが、それは本質的ではない。おそらくデジタルならではの新しいかたちが必要で、それを僕たちが具現化しようと思ってます。昔、映画からテレビに変わったときも、映画をテレビでそのまま流したのがよかったわけではなく、テレビオリジナルのコンテンツが最初に出た。

同じように、僕たちもまったく新しいものを作ろうとしてます。最近ドラマを始めたんですが、ドラマといってもいわゆるテレビドラマではなく、画面が縦長で、かつシミュレーションゲームのリアル版みたいなドラマ。そういうものを作りました。

――シミュレーションゲームみたいとは、どういうドラマなのでしょうか。

【森川】自分の主観目線で登場人物が話しかけてくれて、主人公が画面に出ないというものです。そういうネットならではの、またスマホならではの新しい領域を今作っています。

――そういう新しい企画はどうやって集めてくるのですか。

【森川】いろんなパターンがありますが、ある程度範囲は狭めますね。「何でもいいからおもしろいもの持ってこい」って言うと、なかなか出てこないので、「女性向けのドラマを作りましょう」となったときに、じゃあ、女性向けのドラマをスマートフォンで最適化するためには何が必要なんだろうという要素を洗い出して、それを具現化していくというやり方です。

『起業家のように考える。』(田原総一朗著・プレジデント社刊)
――よく「新しいものを察知するためにアンテナを広げろ」みたいな言い方をしますけれど、ある程度絞ったほうがよいと。

【森川】一言で「新しさ」といっても、たとえば自社にとって新しいのか、日本にとって新しいのか、世界にとって新しいのかによって違います。日本とか自社にとって新しいことなら、先行して新しいことをやっているのを調べて、その要素を取り込めばいい。もともとC Channelの場合はそういうやり方をしていたんですが、世界でも最先端になってしまったので、真似する人がいなくなってしまった。そこまで来ると、まったく新しいものを考えなきゃいけない。それはむしろリサーチというよりは、自分の中で深く掘り下げて、その要素を引き出すとか、そういう形になりますね。

――最初に言っていた「社会のあるべき姿を考える」というのも同じアプローチでしょうか。

【森川】それもあるでしょうし、何か数値を見ることもあるかもしれない。たとえば高齢化みたいな話も、10年後、20年後、どういう人口構成になっていて、そのとき街はどうなっているかとか、政治はどうなるかみたいなことに落とし込んでいくというのをやります。

――その辺りはイメージのきっかけとしては、考えやすいかもしれないですね。

若い起業家に伝えたいこと~「ヴィジョンは有言実行で」

――森川さんは、今いろいろなベンチャー企業やスタートアップの社外取締役などを務めていますが、若い起業家はヴィジョンを最初に欲しがるかと思います。そういう時にどんなアドバイスをしていますか。

【森川】言葉も大事ですけれど、結局は行動が大事です。ありがちなのが、ヴィジョンはこうだって言っているのに、全然それと関係ないことをやっている人。社員にとっては、「やっぱりそんなもんか」という話になってしまうので、せめて本当にその人がなし得たいものをちゃんと言葉化することが重要ですね。

――本人は実は金銭欲や自己顕示欲が強いけれど、ヴィジョンとしては社会の変革を語っていたり。

【森川】「世界を変えたい」とか言いながら、全然世界と関係ないことをやったりすると、やっぱりそれは単なる言葉でしかないですから。かといって「金持ちになりたい」みたいなヴィジョンを掲げるのもね。そういう人たちが集まるなら別にいいですけれど、それよりも、「そもそも自分はどうならなきゃいけないのか?」を考えるの方が、ヴィジョンを持つきっかけになりますよ。

【編集部より】森川さんがどのような考えでC CHANNELを始め、育てているのかについては、田原総一朗氏がじっくりインタビューしています。森川氏とC CHANNNELについて、詳しくは書籍『起業家のように考える』をお読みください。
(村上 敬=聞き手 細谷滝音=構成)
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