2016年12月23日(金)

蕎麦のだしは、土佐の「宗田節」が濃厚でうまい

dancyu 2015年1月号

文・星野一樹 撮影・笹谷美佳

土佐の節でとっただしは、濃厚なのだ!

おいしい蕎麦のだしに欠かせないものは何? この問いに、「鰹節!」と答えようものなら、土佐清水の人たちは苦虫を噛み潰したような顔をすることだろう。

もちろん、鰹節で間違いではない。しかし、江戸前蕎麦特有の濃厚なつゆには、「宗田節」が欠かせないのだ。

実はこの宗田節、そのほとんどが小売店に出回らないため、どうしても家庭で、という場合には、市場の節問屋まで足を延ばすしかない。ということで、その姿を目にすることが稀な、宗田節を求めて高知へひとっ飛び。

全国に出荷される宗田節の7割は、四国の最南端に位置する高知県土佐清水市でつくられている。原料は宗田鰹。地元では「メジカ」と呼ばれる魚である。その大きさは35cmから40cmほど。1mを超す鰹と比べると、かなり小ぶりだ。

太平洋に面した土佐清水の漁港は、かつて全国から集まる鰹漁船の水揚げで賑わっていた。しかし、冷蔵技術が発達して、鰹の刺身やたたきが大都市でも食べられるようになると、水揚げは大消費地に近い漁港に集中することになる。それを機に土佐清水の節工場は、鰹から土佐沖で豊富に獲れるメジカを使った宗田節の製造にシフトしていく。

▼宗田節を知る2つのキーワード

●土佐清水市
四国の最南端に位置する土佐清水市。宗田節の生産量は日本一であり、全国シェアの70%を誇る。日米和親条約の締結に尽力したジョン万次郎(1827~1898年)の出身地として知られる。かの地には電車が通っていない。一番近い中村駅で20km以上離れている。高知の市街地からは車かバスで高速道路を走った後、延々と蛇行する道を通って山越えするしか術がない。ちなみに羽田空港から高知龍馬空港を経由して約5時間の道のり。東京から最も遠い「市」である。

●宗田鰹
学名はマルソウダ。土佐清水での呼び名は主に「メジカ」である。理由は目と口が近いからだとか。土佐清水では、曳き縄漁と呼ばれる一本釣りで漁獲される。漁師たちは夜明け前、一人乗りの船で30km沖の漁場に船を走らせ、餌を撒いてから15m.ほどの円を描くように船を自動操舵し、船尾の竿でメジカを次々と釣り上げていく。傷みやすいため生食には向かないとされるが、8月から9月に獲れる新子は刺身で食される。もちもちとした歯ごたえがたまらない。

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星野 一樹