これが減価償却期間50年ということになると、均等に償却するとすれば、年間3億円しか償却できない。12億円の収益から3億円引くと利益は9億円になるから、毎年3億6000万円も税金で持っていかれる。

日本は「生保マネー」と呼ばれる長期の投資資金が有り余っているが、生保のような投資家は減価償却期間が50年も続くようでは投資に慎重になる。しかし、減価償却期間が15年になれば毎年の税金が安くなるし、16年目からオールキャッシュになるので次のビルを建てようというインセンティブが働く。つまり、大建設ブームが民間の資金で起こるわけで、景気刺激のためには税金で公共工事、という今までの発想は不要となる。

今は全国の容積率を国土交通省が一手に握っているが、そもそも容積率を決める権限は地方の自治体に移すべきだと私は考えている。街の景観をどうするか、住環境をどう高めていくかは、それぞれの地域で決めるのが自治の根幹であり、それぞれの街づくりのビジョンによって建物の容積率を決めるべきなのだ。

自治体の首長が決めると“天の声”になるから、自治体の議会で安全性の裏づけを取りながら容積率を決めていく。今は大学の工学部でも大手の建築事務所でも安全性を計算するプログラムを持っているので、科学的な裏づけを取るのは簡単だ。

容積率の緩和を切り口に、街並みづくりや安心・安全な住環境の整備、減価償却期間の短縮化などを組み合わせれば、都市計画は一気に動かせる。日照権の問題は、開発が終わるまで棚上げにすると地方議会で決めればいい。

そうなれば、景気刺激などしなくても、日本は向こう20年、30年、大建設ブームになる。土地収用のやりやすい辺鄙なところに大土木工事をしても経済の乗数効果は薄い。需要がないからだ。大都市に民間資金が回るようになれば需要があるだけに経済は好回転を始める。

財源は地方債や都市再生債を発行すれば十分確保できるし、年4~5%以上のリターンも見込めるから世界中から投資が集まってくるだろう。

(小川剛=構成 PANA=写真)