富裕層になれる人は不毛な競争消費に巻き込まれない

他人との比較なしに、「それ自体」(上記の場合、「休暇」)として満足を得られるものにお金を配分していくことは不毛な競争的消費に巻き込まれないためにも良いはずです。他人よりいいモノ・豪華なモノを持ちたいといった見栄を張らなくていいのですから、出費は少なくてすみますし、資産形成にも資する。私はそう考えます。

「休暇」にそれ自体の絶対的価値があるとすれば、休暇にお金を配分することはコスパがいいということになります。逆に言えば、休暇をとるために必要なコスト(たとえば、その分仕事量が減って収入が減少する)は「意味があるコスト」とも言えるのではないでしょうか。

では、「休暇」以外にも絶対的な価値があるものは存在するのか?

ウォーウィック大学教授のフレッド・ハーシュは、「positional goods」なる言葉に、次のような意味付けをしました。positional goodsとは、供給に限りがあり社会的希少性によって少数の人しか手に入れられないため、その時点で「相対的に所得が高い者のみが入手できる財」のことです。

このpositional goodsの考え方をコーネル大学ジョンソンスクール教授のロバート・フランクが受け継ぎつつ、別の概念・解釈を付加しました。ロバート・フランクは、positional goodsを社会的希少性ゆえに富裕層にしか手にはいらないものとするのではなく、「他人との比較によってはじめて満足できる地位財」であると定義したのです。これが、現在の「地位財」という言葉の定義になっています。

先ほどのサラ・ソルニックとデビッド・ヘメンウェイの調査の内容(絶対的価値と相対的価値)とかぶりますね。

●地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの
(例:所得、社会的地位、車、家など)
●非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの
(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境など)