【佐々木】多様なネットワークが大切とおっしゃっていましたが、私もそうだったように、日本の女性は、自分がいまいる世界から外に足を踏み出すのに、かなりの勇気を要する場合が多いように思います。自分の“安全地帯”を飛び出すためのアドバイスをいただけますか。

【グラットン】日本の皆さん、特に女性は1対1だと、すばらしい話をされます。洞察力があって、日本の社会についても、自分についてもよくご存じです。それを大勢の前で発言するというところに障壁があるように感じます。

女性の歴史を見ていくと、誰かが声を上げていかなければいけない。いま変容の段階にあるのかもしれませんが、以前に比べるとチャンスが増えてきています。一方で、その下にはまだ潜在的な先入観があるように感じます。女性に対して、ステップアップするな、前に出るなという風潮です。『ワーク・シフト』の出版に合わせて来日したときのこと。日本の上級管理職の女性数人と一緒にパネルディスカッションに登壇しました。ところが、登壇したのは全員が外資系企業の管理職の女性でした。日本の女性はこんなに才能があるのに、それを活かしきれない日本企業は、損をしていると思います。

子育てをしつつ自分を磨く方法はある?

【佐々木】私は子育て真っ最中の40代です。子育てをしつつ、スキルを磨くために自己投資をして、常にスキルをリフレッシュしたい。そう思っている女性が、そのすべてをこなしていく方法はあるのでしょうか。

【グラットン】子どもが小さいときでも働くことはできる。けれどもプラスアルファの部分に関しては、なかなか難しいのです。私自身、1人目の子どもが生まれたとき、赤ちゃんを抱っこしながらパソコンに向かって座り、何かを書こうとしたんですが、脳みそが全然働かなかった。涙が出ました。その後しばらく、働くことはできていたと思いますが、本を書くなどといったプラスアルファの仕事はできませんでした。

でも、100年生きるならば、子どもが成長してからの時間も長くなります。私の子どもはもう20代で、私のことにはまったく関心がありません(笑)。子どものことを年中、考えなくてよいほど子どもが成長したら、もう少し仕事に軸足を移せばいいと思います。