クライアント企業トップのインタビューを手当たり次第英訳

横山カズ・同時通訳者

【三宅義和・イーオン社長】この前、初めて同時通訳者と同席する機会がありました。当社に海外の方が来られた際、通訳を伴っていたのです。はじめは英語だけで会話をしていましたが、折角通訳がいるのに、私の言うことを訳してもらわないと、その人が仕事になりません(笑)。

そんなわけで途中から日本語に切り換えたのですが、わりと直訳をされるなという感想を持ちました。意訳ではなく、そのまま訳している。もちろん、言いたいことは伝わっていました。一般的には、それが普通なのでしょうが、横山さんの場合、相手の立場や文化的背景まで察し、それを考慮しながら通訳するということもしますか。

【横山カズ・同時通訳者】もしかすると、三宅社長の日本語がきれいで、スムーズに直訳できてしまったのではないでしょうか。こうしてインタビューを受けていても、社長の質問はとてもわかりやすいですからね。その通訳者の方は楽ができたと思います(笑)。

僕の場合も通訳する方の国籍や人種、年齢、職業、さらには社会的地位と文字どおり千差万別です。それは事前に知らされていることもあれば、初対面で教えられることも少なくありません。しかも、誰もが流暢なイングリッシュを話すわけではない。むしろ、その人の母国語が持つ独特なイントネーションもあたりまえ。

でも、どんなに聞きづらい発音でも、ゴール地点をめざして訳さなければなりません。それと、その場では、誰が主人公なのか、彼の文化的背景はどんなものかを理解しつつ通訳していく。実は、そのあたりが一番の醍醐味で、しかも難解な言葉を簡単な言葉の組み合わせに置き換えられると誤解も避けられます。意味の“因数分解”をする感じですね。

【三宅】企業トップの通訳を担当されているということでしたが、そういう方などは、多くの会議やイベントなどで主人公の役割を担うと思います。そうした際、クライアントさんの話す日本語を、横山さんは企業トップとしての品格を感じさせる通訳を心がけるのでしょうか。

【横山】そうですね。そのために国内外を問わずトップの立場にある人の英語でのスピーチをネット上で再生して聴いたり、文字に残っているものに目を通してみるということは意識的に行っています。それを繰り返すことで、通訳の仕方は、おのずと見えてくるものです。今通訳を担当させていただいている方の日本語のインタビューは無数にありますから、手当たり次第に英訳しています。

【三宅】なるほど。そこまでやってらっしゃるわけですね。

【横山】ファンになってしまえばいいんですよ。そのときの気持ちは、もうこの人の通訳をできたら本望ということですね。