似て非なるひらめきと直観

さまざまな書物を読み、思考や洞察を繰り返しているうちに、「直観」によって物事の本質が見極められるようになる。直観は「ひらめき」と混同されやすいが、「両者は似て非なるもの」だと、中原さんは強調する。

ひらめきは過去に得た知識や経験をもとに、その類推や組み合わせから論理的に導き出した結論だ。意識下の脳の働きなので、ひらめきのプロセスを後から検証することも可能である。

一方の直観は、知識や経験がベースとなっている点はひらめきと同じだが、無意識下の顕在化していない膨大なデータをも総動員し、思考力や洞察力をフル稼働させて瞬時に答えを出すものなのだ。

「意識と無意識の中にある“経験知の集大成”が直観なので、ひらめきに比べて思考が広く、深く、判断を誤ることが少ない点が特徴です。ビジネスでも直観からイノベーションが起こるケースがよくあります。経験豊かな経営者にも、直観タイプは多く、その代表格はセブン銀行の立ち上げなど数々の事業革新を成し遂げた、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長でしょう」

ピケティがいう自然と儲けが膨らむ仕組みをつくる“r型人間”は、こうした直観を生む仕組みを持った人なのかもしれない。あなたも「知のアスリート」を目指し、古典の読破で脳のフルマラソンに挑んでみてはどうか。

経営コンサルタント/経済アナリスト 中原圭介
経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ」の経営コンサルタント・経済アナリストとして活動。経済や経営だけでなく、歴史や心理学、哲学など幅広い視点から多面的な分析を行い、その予測の正確さには定評がある。
(南雲一男、宇佐見利明、加々美義人=撮影)
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