アンチ・ヒラリー票を投じた女たちのミソジニー(女性嫌悪)

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「ヒラリーを大統領にするくらいなら」。そう考える女たちがヒラリーを嫌い、あるいは憎むのはなぜなのか。「女」という同類項が、なぜ機能しないのか。ここに表出した女の中の分断の原因を、女たち自身の中に巣食うミソジニー(女性嫌悪)だと指摘する人は多い。では、権力志向や上昇志向の強い、非保守的な「ヒラリー型」の女に対して、同じ女が抱く嫌悪感の中身は、一体なんだろう。

それは、同じ女としての条件差が生み出す格差への反感である。そして私は、その反感の濃淡はどこかその女性自身の恐怖や抑圧の度合いで測れるような気もしている。女が権力や影響力を手にし、「しゃしゃり出る」ことへの恐怖や抑圧が強い女性ほど、それに急いでフタをするようにして激しくヒラリー嫌悪の言葉を吐くのではないか。

人間は、自分と異なる他者を目にした時、その「不愉快な差異」に理由をつけて納得しようとする。「○○人だから」「年寄りだから」「男/女だから」と、人種や年代、性別のせいにして、「不愉快」の葛藤を内省するストレスから逃避し、差別という安易な出口で決着をつけようとする。ところが「女だから」という差別が、自分も女であるがゆえに機能しないとき、それは拭いがたい嫌悪として生まれ変わるのだ。

特に、不満を抱いている者、傷ついている者、被害者意識に囚われている者たちは、本人が自覚的であるか否かによらず、攻撃的な嫌悪の感情で身を守る。そう、他の誰にも知らせずそっとアンチ・ヒラリー票を投じた「普通の女」たちは、攻撃的とまではいかないにせよ、ヒラリー嫌悪を表明することで「自分たちの生き方の選択」を守ったのではなかろうか。

トランプの言う「偉大なアメリカ」が取り戻されることで、彼女たちは自尊心を保てるのかもしれない。「自分の生き方は間違っていなかった」「自分の人生は無駄ではなかった」と。「飛ばない」という意味で使われる「保守」の本質とは、そこである。

(代表撮影/UPI/アフロ=写真)
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