「第一印象」でいかに1億を稼いだのか?

ワルたちの目的は何なのか?

実は、応募者のもとには、しばらくして次々と身に覚えのない電話利用料や電話機の代金などの請求がやってくる。カラクリはこうだ。

現在、ネット上では、格安スマホなどの購入や契約が簡単にできるようになっており、ワルたちは応募者の個人情報と身分証明書の画像を使って、不正に電話契約をすることができる。

こうしたネット上の契約では、基本的にクレジットカードが必要であるが、この時、応募者とは別の第三者の他人名義の番号を使用していることが多い。

応募者はウラでこのようなことが行われていることを知らない。だから、淡々と家に届いた荷物や契約書類を次々に転送してアルバイトをしてしまう。

だが、ワルは不正に第三者のクレジットで契約をしているので、携帯電話の代金などの請求は引き落とされることはなく、数カ月を経て、(契約時に住所が書かれた)応募者のもとに請求書がやってくる。そこで、初めて詐欺行為に利用されていることを知るのだ。

応募者が、知らぬ間に不正行為の片棒を担がされてしまったと気づいても、時すでに遅し。請求はほぼ免れない状態となる。

不正な方法ですでに取得された携帯電話は、裏の世界で振り込め詐欺などに使われたり、電話機本体をリサイクルショップや質屋などに転売されたりしてしまう。すでに神奈川県警により、男ら3人が逮捕されているが、アルバイトら400人を使い、4000台ものスマートフォンなどの契約をして、1億円以上を稼いでいたという。

今回の事例では、様々な手口を組み合わせて、応募者を騙しへと落とし込んでいる。ワルたちの立場で言えば、荷物転送のアルバイト料を払うという「損して得取る」手法を繰り返しながら、信頼を取り付ける。第一印象をすこぶるいいものとして相手に植え付け、その後に「本性」をむき出しにして金を奪う。

このアルバイト情報を他人に紹介すれば、応募者たちも紹介料が手に入るため、口コミで話が広がっていった。詐欺の手口は、単体で機能させるよりも、それを複合させることで、より大きな騙しの力が発揮されてしまうことになる。

こうした荷受け詐欺では、応募者の「お金を稼ぎたい」という気持ちが巧みに利用されている。つまり、「お金が稼ぎたい」という思いの裏には、「お金がない」「お金に困っている」という現実がある。それをワルたちは、手玉に取っている。

「これまで何か騙しにあったことはありませんか?」と尋ねると、「私はお金をもっていないので、詐欺には遭わないわ」と自信を持って言う人は多い。しかし、先の事例のように、「お金がない」ないからといって、決して騙しに遭わないとは言えないのだ。

ワルたちは、「取られるお金はないから騙されない」という警戒心の緩さにも乗じて免許証の写真を悪用して、勝手にスマートフォンの契約をする。そして電話が振り込め詐欺などの犯罪行為に利用されてしまう。

また、良かれと思って、アルバイト情報を他人に紹介することで、いつの間にか、悪の手先になってしまっている。すべてが「まさか」であり、驚きなのである。つまり、ここにあるはサプライズなのだ。