「階段で上がる店舗にはしない」

郊外店は山小屋を思わせる造り

写真でもわかるように、コメダの郊外型店舗の建物は山小屋風です。競合店が相次いで模倣した外観で、今では珍しい造りではありませんが、次のような特徴があります。

(1)階段で上がる店にはしない
(2)建物の周辺に高くなる樹木は植えない

郊外型の飲食店には、建物の階段を上がったところに入口がある店も多いのですが、コメダはそうした設計にはせず、普通に歩くうちに店の入口に到達するようになっています。気軽に来店してもらうための工夫だそうです。

また、建物自体も仰ぎ見るような高さではなく、どっしりした造りで、建物周辺に植える樹木も高くなる種類は取り入れず、適度な高さの樹種を選んでいます。

こうした入りやすさへの取り組みは、特に地方の郊外型店で真価を発揮します。地方では自動車通勤も多いからです。たとえば工場勤務者は、スーツ姿ではなくカジュアル姿でクルマに乗って出勤し、会社に着くと作業服に着替えます。そうした人の立ち寄り先として、コメダのような敷居の低い店は使い勝手がいいのです。

昔から「不満あるところにビジネスあり」とも言われてきました。大きな不満に限らず、「ちょっとした不満を取り除く」ことで、店に対する心証がよくなります。気持ちよくクルマの出し入れができる、疲れていても階段を上がらないですむ…といったストレスが残らない店にする――。お客さんは神様ではありませんが、店では主役なのです。

高井尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。著書に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』(文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)などがある。
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