時代に合わせて変化しなければ、生き残れない

国内のビジネスモデルを変革する――。2012年にトップに就任したとき、そう決意しました。

これまでの当社の営業は、売りたいものをこちらで考え、薦めるというやり方でした。株式の売買がビジネスの中心だった時代は、このやり方でも通用しました。

野村HDグループCEO 永井浩二氏

しかし、時代は変わった。お客さまのニーズは多様化し、証券会社の役割は、大きく広がっています。お客さまお一人お一人のニーズを把握し、解決策を提案できる人材を増やさなければ、当社は生き残れない。そう考えました。

当初、私の決意を伝えるため、ある支店を訪れました。ホールに集まった社員は100人。彼らの前で、当社が置かれている状況や営業のやり方を変えなければいけない理由など、考えを話し始めました。けれども、ほとんどの社員は下を向き、シーンとしている。一通り話を終え、質問を募っても一向に手が挙がりません。

この形はダメだ。そう思い、Q&Aを中心としたやり方に変えてもみましたが、ほとんど差がありません。20~30分話しても、社員たちの腹に落ちた様子はまったく感じられませんでした。

大人数を相手に一斉に話しているから、伝わらないんじゃないか。これまでの反省をふまえ、100人の支店に行っても、まず課長を10人ほど集めて話をし、さらに、若手と中堅の代表者を10人ほど集めて話すという、ツーセッション制にしました。

人数を絞ったことで、一人ひとりに対し「今どうなっていますか」「どんな悩みがありますか」と私から投げかけることができるようになりました。相手もリラックスしてきて、質問や意見が出てくる。それに対して私が答えると、「社内のイントラネットで見たことと一緒だ」とみんなが理解し、私の本気さを感じてくれます。

営業改革を進めるため、評価・報酬体系なども歩調を合わせました。こうしたことを社員に直接伝え、理解してもらうため、今も、時間が空けば支店回りを重ねています。これまで約140店回りました。全店まで残り1割ほど。支店回りを始めて約3年ですが、この間に社員の意識も変わりました。大きな手応えを感じています。

大人数を相手に伝えるとき、必ず曲解する人が出てくるもの。それくらい神経を使って伝える努力をしなければいけません。