みかんを丸ごと有効活用

――成長のための次の一手としては、どんなことを考えていらっしゃいますか。
本社横のアンテナショップでは、さまざまな加工商品が並ぶ。

【秋竹】やはり、みかんをとことん追求して深掘りしたいですね。加工品については、これまでは外皮を剥いてから搾汁し、みかんの中身だけを利用する形でした。みかんを全部使おうと思えば、皮と袋も使えます。この皮や袋は非常に機能性が高いので、中身だけでなく皮や袋も有効活用して、みかんまるごとに付加価値をつけるような取り組みをしていきたいと考えています。

例えば、みかんの皮は漢方薬の陳皮として利用できます。現在は大手の漢方薬メーカーに原料として提供していますが、自社でも商品開発したいと考えています。また、袋にはポリフェノールの一種であるヘスペリジンや、食物繊維のペクチンが結構含まれているので、これも利用できます。皮や袋のほうが、中身よりもかえって幅広い分野で商品化できるのではないかと考えています。

――農業生産法人としてはこれまでにない取り組みですね。

【秋竹】みかんについても、新たな種苗を開発し、独自のみかんづくりを進めています。「水晶文旦」と「黄金柑」の花粉を交配して育種した、「早和の香」という新しい柑橘が4年前に種苗登録されました。この新品種は皮が薄く、12月頃から食べられて、とてもおいしい。今年、当社ではじめて結実した「早和の香」を築地市場の仲卸や取引先に見てもらったら、大変好評でした。これを来年か再来年をめどに、一人前の商品に育てていきたいと考えています。

構想としては、周りの生産者に委託栽培してもらい、私たちが責任をもって買い取る。綺麗なものは生果としても出荷し、同時に加工も行う。このようなやり方で、皆が生計を立てられる形で、新しい柑橘を世に広めていければと思っています。

(後編に続く)

有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのメンバーファームの一員である。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援等を提供する、日本で最大級の会計事務所のひとつ。
農林水産業ビジネス推進室
農林水産業ビジネス推進室はトーマツ内の農業ビジネス専門家に加え、農業生産法人などの農業者、小売、外食、食品メーカー、金融機関、公官庁、大学他専門機関など外部組織と連携し、日本農業の強化・成長を実現するための新しい事業モデルの構築を推進している。詳細はWebサイト(https://www2.deloitte.com/jp/aff)参照。
(大和田悠一(有限責任監査法人トーマツ)=聞き手 前田はるみ=文・構成 尾崎三朗=撮影)
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