“鈴木敏夫”的立場からモンストを生み出す

【弘兼】森田さんの経歴を見ると、11年にサイバーエージェントとの合弁会社グレンジに出向しています。

【森田】mixiをプラットフォームとして様々な会社がmixiアプリを開発するようになりました。その中の一つがサイバーエージェントで、「一緒に会社をつくる、誰か行く人いないか」と言われたときに僕が手を挙げたんです。

【弘兼】森田さんの話を聞いていると、様々な部署に回されても、それを楽しんでいる節がある。

【森田】そうかもしれません。大体は断らないです。

【弘兼】その後、ミクシィに戻り、13年5月にゲーム事業本部長に就任します。そこで森田さんが手がけたのが大ヒットゲームの「モンスターストライク」でした。

モンスターストライク(以下モンスト)は、ロールプレイングゲーム(RPG)の一種に分類される。RPGとは、プレーヤーが登場人物を操作し、戦闘などの試練を通してレベルアップしながら、目的の達成を目指すゲームだ。モンストは自分が育てた「モンスター」を画面上で自分の指を使ってひっぱり、敵のモンスターに当てて倒していくという動作が加わっている。

【弘兼】モンストに森田さんはどのように関わられたのですか?

【森田】木村(弘毅・ミクシィ現取締役)から一緒にやろうと話を持ち掛けられて、僕はプロデューサーとして動きました。会社と交渉して予算、人員を確保。ヒットした後は資金調達やチーム編成を考えていきました。自分で言うのもおこがましいのですが、僕と木村は、スタジオジブリでの鈴木敏夫さんと宮崎駿さんのような関係かもしれません。

【弘兼】なるほど、それはわかりやすいですね。モンストを発表する前のミクシィは、SNS事業が低迷、13年度第1四半期から3四半期連続の営業赤字が続いていました。この事態を打開するにはゲームしかないと考えていたんですか?

【森田】この頃、ゲーム業界では「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)というパズルRPGがもの凄い勢いで伸びていました。各社が「第二のパズドラ」を目指してゲームを開発していた時期でした。僕たちはそこではなく、世の中にないものをつくろうと考えていました。

【弘兼】モンストは、画面をピンピンとひっぱって離すので、気持ちいいんですよね。あと、最大4人まで一緒にプレーできるのも特徴でした。

【森田】面白いだけでなく、みんなでコミュニケーションが取れるものをつくりたかった。もともとミクシィは、SNSというコミュニケーションを重視してきた会社です。みんながスマートフォン(以下スマホ)を持っているのだから、一緒にゲームをやれば楽しいのではないか、というところから入りました。頭を悩ましているときに、スタッフの一人がひっぱって離すだけならば誰でもできるのではないかと言い出したのです。

【弘兼】13年10月にモンストをリリース。売上高は14年3月期の121億円から15年3月期には1129億円と大幅に上がりました。ただ、ゲームというのは一定の時間が経った後には、ユーザーに飽きられるものです。そのための対策は?

【森田】まず前提として、僕たちが手がけているスマホを使用するゲームは、ゲーム専用機のゲームとは性質が違います。ゲーム専用機の場合、一つのゲームをクリアすると、次のゲームに移っていきます。一方、スマホのゲームは、自分が遊んだ時間が手持ちのスマホに蓄積されていきます。獲得したレベルやキャラクターが積み上がっていくわけです。ですから、I、II、IIIといったように、スマホのデータを引き継いだうえでのシリーズ展開が大事だと考えています。

【弘兼】森田さんはモンストの成功を認められて、14年6月に代表取締役社長となりました。社長に指名されるという予感はありました?

【森田】まったくなかったです。

「モンスト」の遊び方