ゲームにハマる要素は「収集」と「交換」

今回は、まずは「ポケモン」そのものについて復習してみましょう。

ポケモンは1996年にゲームボーイの1ソフトとして登場したわけですが、ポケモンがヒットし、これだけの認知度を得られたのは、ゲームにとどまらずに派生作品・商品が大量に作られたことにあると思います。それは、マンガ、アニメ、キャラクター商品、カードゲーム、アーケードゲーム化……など非常に多岐にわたり、私なども小さい子供を持つ親ですが、家の中には購入当時は100円くらいだったでしょうか、ポケモンの指人形が何百個もあります。

主要メディアにおける展開をざっと見渡してみても、ゲームのポケモンが販売された1996年2月の2カ月後の4月には、ゲームを原作としたコミカライズ作品(マンガ化)の「ふしぎポケモン ピッピ」が『別冊コロコロコミック』(小学館)連載を開始し、後に、ゲームソフト名そのままの「ポケットモンスター」と改題した連載が『月刊コロコロコミック』に、同年9月から移籍連載をスタートさせています。翌1997年4月1日にテレビ東京で始まったテレビアニメで、最高視聴率で18.6%を記録、今でも続く同局の最長寿番組となっていますし、いくつもの関連番組が生まれました。映画では、東宝による配給で1998年から「ピカチュウ・ザ・ムービー」(PIKACHU THE MOVIE)がスタートし(2013年の16作まで)、2014年の17作からは、「ポケモン・ザ・ムービー」(Pokemon the movie)とシリーズタイトルを変えながら、現在も人気作品として続いています。どれだけ人気かと言えば、いずれの作品も方が作品全体で毎年ベスト10に入るといった具合で、2015年の18作目までの合計で観客動員数が7000万人を超えるという、他には見当たらないいわゆるキラーコンテンツとなっています。

アニメは海外でも放映されて、アメリカでも大人気となりました。このポケモンというキャラクターは、逆に日本人だとその海外における人気ぶりに気付きにくいものです。ですが、全世界的に見れば一番売れたゲームソフトはスーパーマリオで、ポケモンはその次に売れたソフトです。ですから、その認知度・人気度は、実は日本人が想像する以上のものがあります。例えば、ニューヨークの年始を祝うパレードでは必ずピカチュウの風船がアドバルーンとして飛ばされているほどです。

ゲームソフトのポケモンシリーズは1996年に最初の「赤と緑」から始まるわけですが、1999年には「金と銀」が、2002年には「ルビーとサファイア」と、2~3年おきに必ず2種類ずつのソフトがリリースされています。それが、ゲームボーイから始まり、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドー3S、3DSと、任天堂が発売するゲーム機に引き継がれながらリリースされ続けます。

誰が見ても分かることではありますが、本書のような経済的視点から見るとこれが任天堂の商売の上手なところで、たった一つではない複数のソフトを同時発売し、しかも、このゲームにハマる肝心な要素は「収集」と「交換」にあるので、2種類のソフトで出てくるモンスターはほとんど同じですが、なかなか手に入らない“レアキャラ”や、手に入るキャラクターでもソフト毎で異なる“色違いキャラ”を設定することで、「収集」“コンプリート欲”を喚起させ、「交換」によるユーザー間のソーシャルゲーム性を高めるという戦略には舌を巻くものがあります。

ちなみに、今年の11月には3DSでの「サン・アンド・ムーン(太陽と月)」の2つのソフトがリリースされています。世界中での初回出荷本数は1,000万本を超えており、大人気のようです。